2006年3月18日 (第2765回)

世界遺産の保護と防災対策

立命館大学 COE推進機構教授 益田 兼房

 京都は1200年余の歴史をもつ都市であり、まさにアジアにおける文化遺産の宝庫です。

 日本列島は、太平洋プレートなどのせめぎ合いで盛り上がった地球上のしわのような存在で、地震や火山噴火などの災害が宿命という難儀な場所です。ご先祖様たちは、変化のある海岸や山脈や温泉など、そこに自然の美しさと楽しさを見いだして和歌や書画を楽しみ、毎年の台風も翌日には青空のもと再建の槌音高くと、災害とともに気楽に暮らしてきたのです。

 でも時代は変わりました。石油文明の下、列島の人口が一億人を超え、文化遺産の周囲を木造住宅が埋め尽くしたいま、直下型地震が京都や奈良を襲うと同時多発火災が全ての文化遺産を消滅させる、未曾有の事態が起きる可能性が高まっています。

 美しい京都を、その木と紙でできた文化遺産と一緒に、将来の世代に確実に手渡すために、いま何を我々の時代はすべきなのか、ご一緒に考えましょう。

 立命館大学歴史都市防災研究センターは、京都のような木造の歴史都市のために役立ちたい、と願っています。