2016年2月27日 (第3157回)

京都の文化財への獣害‐アライグマ・ハクビシン

関西野生生物研究所 立命館大学歴史都市防災研究所 客員研究員 川道 美枝子

 北海道大学在学中からエゾシマリスに関する研究を続けてきた。食物をほお袋に詰めて巣へ運ぶシマリスの後を、そっと追跡し、巣を見つけ出し、巣の前で日の出から日の入りまで、時には15時間近くシマリスの巣利用を調べるなど、研究では忍耐力を試された。シマリスは単独で生活し半年近く地下の巣で冬眠する。エゾシマリスは同じサイズのリス類よりも寿命が長いので、冬眠する分だけ寿命を延ばしている可能性がある。そこで、冬眠しないシマリスはどうかと、暑いアリゾナで別種のシマリスの研究も始めた。

 シマリス三昧の人生になるはずが、2005年、好奇心で京都市内のアライグマ調査をしてみようと思ったのが、泥沼にはまるきっかけだった。調査時点ですでに京都市内の山沿いにある主要な社寺はアライグマに荒らされていた。屋根に穴を開け、柱を傷つけ、屋根裏を糞尿まみれにしていた。歴史的な文化遺産を管理する社寺の人々が困り果てていたが、行政は対策に動いていなかったので、見るに見かねて「専門外だけど」アライグマの捕獲を含む対策を開始することになってしまった。それ以来、夜中に「アライグマが出た。何とかして」という相談の電話を受ける日々が続いている。