2006年4月1日 (第2767回)
認知症ケアの到達点と医療・介護の課題
産業社会学部教授 石倉 康次
「痴呆症」が「認知症」という呼称にかわり、「呆けたらなにもかもわからなくなる」というイメージは徐々に変わりつつあります。
2003年から4年にかけて日本を訪問し、認知症を病む本人として、自らの生活の中にある不自由さと希望を語りながら、社会のイメージがいかに誤っているかを説いて回ったクリスティーン・ブライデンさんの貢献もありました。
わが国でも60歳にならずして認知症と診断された「若年認知症」の人の中から、自らの体験を公衆の前で語る人たちも出てきています。「認知症」という呼称への転換もこのような流れの影響をうけてなされました。
医療・福祉の現場では、「拘束の廃止」や「デイケア」「グループホーム」の実践など2000年の介護保険の施行を契機にあらたな取り組みもひろがりました。出発当初は寝たきり老人対策にウエートがおかれていた介護保険は、2005年の見直しで認知症ケアが重点課題とされました。
講座では、このような流れをつくってきた現場を紹介しつつ、これからの課題をみなさんと一緒に考えたいと思います。