2017年3月4日 (第3195回)

東北の復興住宅・まちづくりの現在 ~復興の現場を通して見えてきた「住民主体の地域再生」と専門家の役割~

立命館大学政策科学部 ・特別招聘教授 塩崎 賢明

 東日本大震災から6年近くが経過しましたが、復興にはまだ多くの課題が残っています。住宅の復興についても、ハードの整備がようやく半分程度できた状況で、今後そこでの生活が始まり、様々な問題が発生する可能性があります。被災者にとっての復興は、建物が出来上がれば完了というわけではなく、むしろそこでの生活が、以前のように(あるいはそれ以上に)暮らしやすいものとなるかどうかが問われます。この点を見誤ると、建物は新しく立派に見えるが、住む人々は孤立化し、孤独な生活となったりします。阪神・淡路大震災の経験では、仮設住宅や災害公営住宅に住んでから亡くなった孤独死はこの20年間で1130人に達しています。住宅建設も完成戸数を追いかけるのではなく、生活やコミュニティを十分踏まえたものとしなければなりません。東日本大震災においても、そうした配慮をした計画や設計は数少ないなかで、石巻市北上地区での取り組みは、きわめて重要な成果を収めている貴重な例だと思います。