2017年8月5日 (第3212回)

戦争と社会正義 -昨今の軍事的緊張・難民・人権問題に法はどのように対応するのか?経済社会協力による平和達成への道のり

立命館大学法学部 教授 吾郷 眞一

 集団安全保障体制が成立し、戦争は違法化されたと言われています。しかし、世界を見渡すと「本当かな?」と思われることばかりです。 その原因の一つは国連憲章のアキレス腱とも言える「集団的自衛権」の導入です。そのアキレス腱が切れる前に、経済社会的基盤から戦争のない社会へと持って行こうという動きが見られます。

 国際法のうちでも「協力の国際法」と言われるものの充実が目指されるのです。南北問題、難民問題・人権問題をグローバルに解決していくことは、 道のりは決して短くはないのですが、平和達成に向けては、むしろ確実な方法なのではないでしょうか。ただ、昨今のトランプ現象とか、 英国のEU離脱を見るにつけ、経済社会統合が政治的統合をもたらすという論法もそう簡単ではないことがわかります。

 SDGs(持続可能な開発目標)というものがあります。それが達成されたら、戦争の危険は格段に少なくなるはずです。 SDGsの特徴は、その目標達成のために、従来のような主権国家だけでなく、企業とか市民社会が関与する仕組みになっています。 平和な世界を作るためには、政府や軍隊だけに頼ってはいけないとも言えます。