2017年8月26日 (第3213回)
「マンガ」と「平和」を展示する マンガミュージアム・平和ミュージアムそれぞれの展示経験をふまえ、 戦争マンガや平和に関する展示について、実感や課題を語り合う
京都精華大学国際マンガ研究センター教授・副学長 吉村 和真
戦後日本において、マンガはさまざまなテーマや素材をもとに「戦争」や「平和」を描いてきました。管見の限り、 1948年以降、戦争・戦記マンガが発表されなかった年はなく、その累計は約1000作に及びます。
2015年に京都国際マンガミュージアムで「マンガと戦争展」を開催した際、私は監修を務めました。 原爆・特攻・沖縄・満州・戦中派の声・マンガの役割という6つの視点から計24作品を展示したところ、世間の反響は大きく、 のちに東京とアメリカに巡回されることになりました。
しかし当然ながら、「マンガ」と「マンガの展示」は表現としてもメディアとしても別物です。 マンガをはじめからおわりまで読むことで得られる知識や感想と、マンガの一部を切り取って装飾する展示から見えてくるものは、単なる形式の違いを超え、 メッセージの伝わり方から作品そのものの評価まで異なってきます。
今回の講座では、マンガミュージアムと平和ミュージアムに携わる二人の講師が、それぞれのミュージアムで扱うテーマ、素材、手法、 さらには来館者層の違いや共通点について意見を交わしながら、「マンガ」と「平和」を架橋する展示の課題と可能性を考察します。