2017年8月26日 (第3213回)
「マンガ」と「平和」を展示する マンガミュージアム・平和ミュージアムそれぞれの展示経験をふまえ、戦争マンガや平和に関する展示について、実感や課題を語り合う
立命館大学文学部教授・国際平和ミュージアム副館長 田中 聡
戦争と平和について考える際に、世界各地の平和博物館が果たしてきた役割はきわめて大きなものがあります。 そこは異なった立場からの「戦争」「平和」観がぶつかり合う場であるとともに、対立を越えた共存について考える場でもあります。 こうした平和展示の場において取り上げるのが難しい素材の一つが、戦争を描いたマンガ作品です。
マンガはそれ自体、非常に大きな影響力をもつメディアであり、日本のあるマンガやアニメが翻訳されて他国でも広く受け入れられる例は数多くみられます。 ところが、戦争という事件をフィクションとして物語るマンガ作品を展示することで、歴史資料にははっきり書かれていない「事実」を読み取ることも出来、 読む人それぞれが事件について多様な解釈を生み出すきっかけにもなりえます。戦争を単純な善悪で描くことはもはや困難である今、 平和博物館はどんな歴史像を提示できるでしょうか。
紋切り型では無い「戦争」「平和」展示を考える際にぶつかるこの難題について、今回の講座では、マンガ→ミュージアム、ミュージアム→マンガという 双方向的な観点から議論を交わし、考えを深めたいと思っています。