2017年9月2日 (第3214回)

白川文字学の今後の展望

白川静記念東洋文字文化研究所 客員協力研究員 佐藤 信弥

 白川文字学の特徴は、漢字の三要素である字形・字義・字音のうち、特に字形の分析を重視することにあるとされています。実のところ、中国の文字学者も甲骨文字など古文字の研究は字形を主とすべきであると言っています。

 ただ、同じ字形重視でも、白川静はその文字が何をかたどっているのかを読み取ることを目標とするのに対し、中国の学者は、甲骨文字→金文→戦国文字→小篆の各段階で字形がどのように変化して現在の形になったのかを整合的に説明することを目標としており、その内実は大きく異なります。

 中国での研究が、従来用例の不足していた戦国文字の急増によって大きく進展している一方で、白川式の方法論はこの新しい材料の増加にうまく対応できていないように思います。こうした両者の研究手法の得失を考えることで、白川文字学の今後の展望を探っていきたいと思います。