2017年9月16日 (第3216回)

白川文字学に基づいた漢字教育の可能性

白川静記念東洋文字文化研究所 研究員・立命館大学大学院教職研究科 准教授 後藤 文男

成り立ちとつながりで学ぶ漢字学習

 白川静先生(1910~2006立命館大学名誉教授)は最晩年、自らの「文字学」の成果を広く学校教育の現場で活用してほしいと精力的に漢字教育に関する講演を行われました。白川先生の提唱された漢字教育は「成り立ちとつながりで漢字を学ぶ」ということでした。ともすれば、書いて覚えるだけの機械的で単調な作業に陥りやすい漢字学習に、「漢字のルーツ=成り立ち」と「漢字のつながり」を知って覚える覚え方があることを伝えたいとの思いからでした。白川先生はその学習法を「理想の漢字教育」と呼んで、漢字教育に新しい風が起こることを願っておられました。現在、立命館の付属の小・中学校では白川先生の遺志を継ごうと「白川式漢字学習法WG」を立ち上げ、授業開発や教材づくりに取り組んでいます。『成り立ちとつながりで学ぶ漢字シート35』と題したワークシートを第2集まで作って現場での実践に役立てています。