2018年4月28日 (第3238回)

メンタルヘルスと若者文化

立命館大学総合心理学部 教授 齋藤 清二

 SeijiSAITO「今の若者が考えていることはさっぱり分からない」という嘆きは、4000年以上前の古代エジプトのパピルスにも記載されているという話があります。 そのくらい年上の世代の者からみた若者文化は理解しがたく、多くの場合「けしからん」とか「そのせいで世の中がだめになっている」などとして ネガティブにラベルされやすいものです。しかし、現代の若者が好んだり熱中したりするものごと、例を挙げれば、アニメ、ゲーム、ライトノベル、SNS、 コスプレ、アイドル活動などは、思春期から青年期にかけての若者が多彩な自己表現を通じて自分自身のアイデンティを確立していく過程において 積極的な意味をもっている可能性があります。一方で思春期から青年期は、悩み、生きづらさ、将来への不安などを通じて、うつ状態、引きこもり、 自己破壊行動などのいわゆるメンタルヘルスの問題が生じやすい時期でもあります。このような問題に対しても、いわゆる若者文化が悪い影響を与えているとする見解と、 むしろ積極的な意義を見出していこうとする見解があります。近年私達の大学院では、こういったテーマについて、臨床心理学や対人援助学などの幅広い視点から 研究に取り組む大学院生が増えています。今回の講演では、特に若者文化とメンタルヘルスの関係について焦点をしぼって、 いくつかの研究を紹介しながら論じてみたいと思います。