2006年6月10日 (第2775回)

近代京都と商業景観―市場・商店街・百貨店―

文学部助教授 加藤 政洋

 いつのことだったか、今でもよく利用する系統のバスに初めて乗ったとき、「西陣京極」というアーチが目に入りました。なるほど京都には新京極、寺町京極、松原京極といった名どころの商店街があります。規模は小さいですが、「壬生京極」なども「京極」という名を冠した商店街のひとつです。

 わたしがこの「京極」から想起したのは、かつてあちこちの都市にあった「銀座」でした。帝都の中心に発展した商店街にあやかろうとしたのでしょうか。一説によると、昭和6年ごろから10年にかけて全国に広まったといいます。さしずめ京極は“京都の銀座”といったところなのでしょう。

 ところで、「京極」を字義通りに解釈すれば、京都の「極(最果て)」、つまり都市の縁辺を意味しています。しかし、この名が商業地に付けられているところを見ると、名実ともに繁華な商店街のみならず、たとえ賑やかさでは劣るとしても商業地として地域の中心たるべくその名をあえて冠した商店会の意図を読み取ることもできそうです。

 新京極にはじまる旧市街地周辺の「京極」を冠した商店街。今回の土曜講座では、そうした商店街をはじめ、近代的な都市景観をいろどるいくつかの商業施設にスポットをあててみたいと思います。