2020年1月18日 (第3301回)

京都の映画館文化 ー 新京極の映画看板を中心に ー

立命館大学映像学部 教授 竹田  章作

 TVやネット上で映画の宣伝が頻繁に流れる現在、民衆はその見せ場や内容を動画として捉え、豊富な情報によって観客となるかどうかを判断する。しかし、それらの情報が無かった時代、民衆は新聞広告や該当ポスターによって上映されている映画の情報を入手し、劇場へ通った。特に映画館前の巨大な看板に描かれたスターの顔や映画の1シーンが通行人を館内へ導いたことも確かな事実である。  

 映画看板は劇場によって同じ映画であってもその内容に違いがあり、それによって観客の動員数が変化したという事実も残っている。当然、大作映画には宣伝費を多くかけた巨大な看板が用意され、看板制作会社は興行成績の一端を担い、その腕を競ったと考えられる。  

 かつて大衆娯楽の代表であった映画は映画館と言う装置によって観客を非現実の世界に誘導し、観客は映画館の外観が分からないくらいに飾られた映画看板をくぐって劇場内に入る時、現実から非現実への逃避を感じ取ることができたのである。