2020年1月25日 (第3302回)

昭和・平成の見世物文化

京都文教大学総合社会学部 教授・ 立命館大学先端総合学術研究科 非常勤講師 鵜飼  正樹

 かつて、見世物小屋は人々の身近にありました。昭和30年代初めには、全国に見世物を興行する一座は40近くあり、ちょっとしたお祭りには必ず見世物小屋が見られたのです。平成の初期でも、八坂神社の花見、ゴールデンウィークの藤森神社(藤森祭)、秋の御香宮(伏見祭)など、京都で見世物小屋を目にする機会はありました。

 現在、日本に残っている見世物興行一座はたった1軒。関東での興行を中心としているため、京都ではこの20年ほどの間、見世物小屋はまったく見かけなくなりました。

 この講座では、「人間ポンプ」というユニークな芸を得意とし、昭和・平成を見世物小屋の舞台に立つ芸人として生き抜いた安田里美さん(1923~1996)のライフヒストリーを軸に、見世物の世界を見ていきます。安田さんは、「頭の毛の白い子ども」として生まれ、数え年の4歳で親元から見世物興行一座にもらわれました。そして、漫才、奇術、サーカス、浪曲、人間ポンプといったさまざまな芸を身につけ、亡くなる1カ月前まで舞台に立ち続けました。

 まさに「最後の見世物小屋芸人」と呼ぶにふさわしかった安田里美さんの目を通して、昭和・平成期の見世物の世界を解き明かします。