2020年4月11日 (第3309回)

イスラームを生きる「女性」ー変革の錨/契機

立命館大学国際関係学部 准教授 鳥山 純子

 今わたしたちがムスリム多数派諸国の課題を語る際、「女性の問題」は避けて通ることができません。その際女性抑圧は、しばしばイスラームと結び付けられます。確かに、ジェンダーギャップ指数2020を見れば、史上最低を記録した日本(153か国中121位)の前後に中東諸国が並びます。日本のランキングが報道される際、「中東並み」という表現が用いられることもありました。この表現に見られるように、わたしたちの当たり前の一部として、中東は女性の地位が低い地域という認識があるようです。他方、レバノン、イラク、スーダンの近年の民主化運動では女性が重要な役割を担っている、というニュースはどうでしょうか。一つ目の認識に比べると納得度が下がり、違和感や疑問を覚える部分もあるのではないでしょうか。

 上記二つの情報は、相反するものではありません。どちらも国際的な状況に置かれた個別な社会的文脈のもとに生まれた現実です。本講座では中東地域を対象に、女性たちとイスラームの関係、女性たちと社会変化の関係、社会変化の中での女性の創出をたどることで、「中東=イスラーム=女性抑圧」という単純化された認識枠組みの解きほぐしを試みます。