2020年4月18日 (第3310回)
ムスリムの食の多様性 ーーハラールの解釈や実践と食嗜好
立命館大学食マネジメント学部 教授 阿良田 麻里子
ムスリムの食というと、どんなものをイメージしますか。アラブ料理? ケバブ? それだけではありません。イスラームで許されている物事をハラールといいますが、精進料理のように、特殊なハラール料理という形式の料理があるわけではありません。世界中のムスリムが、それぞれ自分たちの好みの食べ物を食べています。
訪日・滞日ムスリムで多いのは、インドネシアやマレーシアなど東南アジアからきた人々。そしてパキスタンやバングラデシュなど南アジア、中東でも非アラビア語圏のイランやトルコの人々です。日本人もいます。飲食の好みにも、禁忌の解釈や実践にも、地域や民族による違いがあります。もちろん同じ地域の出身者でも家庭の違いや個人差もあります。パンや肉を好む人もいれば米や魚を好む人もいますし、ハラールかそうでないかという判断にも差があるのです。
アレルギーと同様、宗教的禁忌に配慮することは必要ですが、ネット情報等に振り回されて過剰防衛になり、食べられるものまで勝手に排除するのは禁物です。基礎的な知識を押さえて、コミュニケーションをとり、目の前にいる人の食べたいものや食べられるものを、無理なく提供できるように工夫しましょう。