2021年7月3日(第3337回)

社会を考えるためのゲーム

立命館大学 映像学部 講師 井上 明人

 「ゲーム」というと何かと悪いイメージがもたれがちだが、多彩で複雑な表現を詰め込むことにかけては、「ゲーム」は興味深いメディアである。とりわけ、社会の複雑な相互行為によって生じるメカニズムを理解させようとするようなことや、「体感することではじめてわかる」というようなタイプの出来事については、ゲームというメディアは優れた特質をもっている。

 この特質を用いて「社会」のありようについて考えるためのゲームを紹介する。ジェンダーの問題を扱った『Coming Out Simulator』。社会的な経緯から生じる差別の問題を扱う『My child lebensborn』。組織内の評価インセンティブによる組織の逆機能の問題を描いた『Legal Dungeon』『HEAD LINER』など、ゲームを通じてこそ理解が容易になるような社会のメカニズムや、社会問題の表現をする特筆すべき作品が多く出はじめてきている。

 こうした事例から、「ゲーム」というメディアから社会を考えることの面白さに触れてもらえれば幸いである。