2022年12月10日(第3370回)

嵯峨本願寺の和漢歌仙

立命館大学文学部 教授 川崎 佐知子

東本願寺の別業、渉成園(京都市下京区、別称枳殻邸)は、寛永十八年(1641)、三代将軍徳川家光が寄進した土地に、伏見城の遺構の一部を移し、石川丈山が作庭した国の名勝です。寛政十一年(1828)に頼山陽が撰定した「渉成園十三景」でもよく知られています。このたび、「渉成園十三景」のひとつ「偶仙楼」に飾られていた『和漢六歌仙板額』一函十二枚が、京都市右京区にある宗教法人本願寺(通称嵯峨本願寺)に残っていることがわかりました。新六歌仙の和歌と肖像をかく六枚、中国詩人の漢詩と肖像をかく六枚からなる十二枚の板額は、江戸時代中期の画家渡邉始興の絵に、公家の近衞家凞が揮毫した稀少価値の高い作品です。作成された事情と内容的特色についてお話しします。