2023年1月21日(第3372回)

「障害のある教師」からインクルーシブ教育を問い直す

東京大学先端科学技術研究センター 特別研究員 中村雅也

 インクルーシブ教育とは人間の多様性を尊重し、障害のある人が社会に効果的に参加することを目的に、障害の有無にかかわらず子どもたちがともに学ぶ教育です。これまでインクルーシブ教育はもっぱら障害のある子どもを包摂する教育として捉えられてきました。しかし、インクルーシブ教育が多様性を尊重し、障害を包摂する教育であるならば、子どもたちだけでなく、教育のもう一方の当事者である教師の障害も包摂するものでなければなりません。それにもかかわらず、これまで障害のある教師は教育現場からむしろ疎外されてきました。学校という組織や学校教育という制度がそのようなエクスクルーシブ(排除的)な構造をもっているからです。

 本講座では障害のある教師の教育実践を紹介し、障害のある教師という視座からインクルーシブ教育について考えます。また、障害のある教師を取り巻く課題を分析し、障害のある教師が実力を発揮して働き続けるための支援方策についても検討します。