2023年3月4日(第3375回)

相続と信託

大阪経済大学 客員教授 岸本 雄次郎

 不老不死が実現されたわけではありませんが、人生百年時代と言われ始めました。そこで、現役を退いた後もそこそこ長くなった人生における経済基盤が重要となって参りました。加えて、可愛い孫子のための、保有資産の上手な残し方も優先順位の高い事項となっています。そういう中、最近では「信託」という法的手法が話題となっています。

 アメリカの大富豪の中で保有資産を「信託」していない者はほぼ存しないとされている一方、わが国では今のところ「信託」はそれほど用いられておりません。その理由としては、遺産目録の検認に関する日米の法制面の相違が最も大きいのですが、死生観の相違が最大要因でありましょう。

 そこで、最近とみに話題となっている「信託」に関して、人生百年時代における資産の管理方法および次世代への資産の継承方法につきお話し申し上げたいと考えております。

 後継ぎとなるべき子女が存しないとか、逆に、一子相伝をしたいのにそれがままならないとかの、事業承継等の具体的問題を題材として、「信託」による解決法を皆様とご一緒に考えて参りたいと存じます。