2024年07⽉06⽇(第3407回)

平安貴族の読書 -藤原道⻑はどうして漢籍を蒐集したのか

慶應義塾⼤学 名誉教授 佐藤 道⽣

 藤原道長(966-1027)と言えば、平安時代の政治権力者という印象が強いけれども、学問や文学と無縁だったわけではない。実は、彼は生来の「本好き」で、書籍蒐集が唯一の趣味だったと言っても言い過ぎではない。中でも漢籍の蒐集にかけては、彼の右に出る者はいなかった。漢籍とは、『論語』や『史記』といった中国伝来の、漢語で書かれた書籍のことである。道長はどうして漢籍の蒐集に熱心であったのか。そこには彼個人の資質に加えて、当時の東アジアの文化的潮流が影響を与えていたように思われる。本講演ではこの問題について、道長の日記や彼の残した詩歌を手掛かりとして考えてみたい。