2024年08⽉03⽇(第3409回)

ガルトゥング平和学の現代的意義について ―― 現代において戦争は暴⼒か

⽴命館⼤学国際関係学部 ⾮常勤講師 藤⽥ 明史

 本講演の第一の目的は、ガルトゥングの平和学体系について簡潔に説明することである。ガルトゥング平和学は、二つの異なった平和(peace)の定義をもつ。それらは次の通りである。

[Ⅰ]平和とは、あらゆる種類の暴力の不在ないし低減である。

[Ⅱ]平和とは、共感・非暴力・創造性による紛争の転換である。

 第一は暴力(violence)の概念を基礎とし、第二は紛争(conflict)の概念を基礎とする平和の定義である。ガルトゥング平和学の体系は、第一と第二の平和を同じものとみなす(identify)ところに成立する。こうして成立するその平和学体系の現代的意義にも言及する。

 第二の目的は、ガルトゥング、加藤周一、そして森嶋通夫の間で行われた「論争」――三人が本学の客員教授であった時期はかなり重なっていた――をエピソード的に紹介することである。それらはそれぞれの学問観に関わり、きわめて興味深いものであった。