2024年09⽉28⽇(第3412回)

アニメ聖地でおきていること〜 通俗的な聖地の形成と コンテンツツーリズムの可能性

北海道⼤学 観光学⾼等研究センター 教授 ⼭村 髙淑

  2010年前後から、アニメやマンガの舞台地を巡る旅のことを、宗教的な「聖地巡礼」という語を通俗的に転用して「聖地巡礼」と呼んだり、「コンテンツツーリズム」と呼んだりすることが一般化しています。さらに2010年代後半からは、インバウンド旅行者の増加に伴い、日本国外からもこうした通俗的聖地巡礼者(コンテンツツーリスト)が急増しています。こうした中、アニメやマンガといったジャパンコンテンツに対し、言語や文化の枠を超えて交流を促進する「有効なツール」になっているという評価がなされるようにもなりました。しかしその一方で、そうしたコンテンツそのものや聖地巡礼行為が、様々な「文化的衝突(コンフリクト)」を生んでいることも事実です。講演者は15年以上にわたり、国際共同研究を通して、こうしたコンテンツツーリズムの可能性と課題について研究を行ってきました。本講義では、国際共同研究で取材した様々な事例を取り上げつつ、以下の三点について皆さんと考察をしていきたいと思います。 第一に、通俗的な聖地が生まれるプロセスとは、どのようなものなのでしょうか? 第二に、越境するコンテンツや、そうしたコンテンツが生むツーリズム(コンテンツツーリズム)は、どのような文化的衝突・コンフリクトを生んでいるのでしょうか? 第三に、コンテンツツーリズムには文化を超えた建設的な対話を生む可能性はあるのでしょうか?