2024年11⽉02⽇(第3415回)

VR・メタバースによる現実空間の3D保存と教育利用

立命館大学 衣笠総合研究機構准教授 山内 啓之

 近年、ヘッドマウントディスプレイで体験するVirtual Reality(VR)のコンテンツが社会に普及しつつある。これに、写真測量などで取得した三次元地理情報を組み合わせれば、仮想空間に現実空間を再現でき、実際にその場にいるような雰囲気で散策しながら対象物を観察する擬似体験ができる。さらに、オンラインのメタバースプラットフォームを活用すれば、自作の仮想空間に他者を招いて交流できる。このような特徴から、様々な分野でこの種のVRの教育利用が期待されている。なかでも、実際の場所や事象を対象とする地理教育での有用性は高い。ヘッドマウントディスプレイで体験するVRの地理教材があれば、地理学が伝統的に重視してきた現地での「地理的な見方・考え方」の教育を、距離、費用、社会的制約を超えて教室内で再現できる。さらに仮想空間の特性を活かせば、事象の観察時に崖から飛び降りたり、空を飛んだりするような現実では不可能な自由度の高い学習行動も可能となる。本講演では、自然環境、地誌、災害、文化資源などを実際にVR教材にした事例や、それを用いた教育の実践例と効果について紹介する。