2025年4⽉19⽇(第3424回)

「AIと共に生きる社会―人間の尊厳・権利・責任の未来」

立命館大学国際関係学部 教授 川村 仁子

 これまで人間の歴史は科学技術の発展と共にありました。特に第二次世界大戦以降、科学技術は国家や企業主導の巨額投資によって研究開発・管理され、実用化され身近にあふれつつも私たちには手に追えないものになっていきました。同時に、科学技術は人間の生活を豊かにするものというよりも、その効率性や効果に重点が置かれ、あまりにも商業主義に偏重した傾向もみられるようになっています。そのなかで、私たちは常に科学技術に対して人間や社会が抱える問題を解決してくれるかもしれないという希望と、人間の価値基盤や社会、地球環境をも破壊するかもしれないという畏れを抱いてきました。

 人間と科学技術の未来を考える上で重要なのは、科学技術の発展は目的ではなく、人間の生活と能力を豊かにする手段であることを忘れてはならないということです。今回は、近年注目されるAIが人間の尊厳や権利、法的責任体制にどのような影響を与えうるのかを紹介しつつ、人間がそれをいかに利用・管理するのか、何よりも私たちは将来的にどのような社会を目指し、そこでAIにどのような役割を担わせたいのか、つまり科学技術と共に生きる社会の理念について議論したいと思います。

講座お申込み