2026年2⽉28⽇(第3442回)

加藤周一が愛したものーー言葉と人間

立命館大学加藤周一現代思想研究センター 研究顧問 鷲巣力 / プロジェクト研究員 半田侑子

 加藤周一は90年の生涯で、数万冊の書物を読み、数万枚の原稿を書き、数千通の手紙をしたため、数千回の授業や講演を行った。書物、原稿、手紙、講義、講演は、いずれも「言葉」を遣って「人間」に働きかける営為である。なぜ、かくも多くの言葉を遣った営為を行ったのか。それは「言葉」によるコミュニケーションを大事に考え、「人間」の可能性を信じ、「言葉」と「人間」を愛していたからにほかならない。加藤はまたいつも「弱者」の立場に立って行動し、決して権力に近づかず、「弱者」の連帯を目差した。そのような加藤の思想と行動は、傲慢と偏見が力を得ている今日の風潮の対極に位置するものである。加藤の言説から、加藤の考え方の基本を学び取ることは、今日のあやうい風潮に、どのように対処したらよいかが示される。

講座お申込み