2006年11月25日 公開講演会

元サッカー日本代表監督 岡田 武史

 11月25日(土)、朱雀キャンパスにおいて、元サッカー日本代表監督・岡田武史氏による公開講演会「目的をひとつにした集団」を開催した。講演会では、組織論・リーダーシップ論のほか、環境保護やスポーツ文化の醸成など、岡田氏の口から多彩なテーマが飛び出し、約400人の聴衆は熱心に聞き入った。

 まず岡田氏は2003年、2004年にJリーグ、横浜Fマリノスを率いていた時期に、選手・チームの目標を明確にするために5つのテーマ"Enjoy"、"Thinking by yourself"、"Concentration"、"Hard Work"、"Communication"を掲げたことを例に、これらを徹底的に「哲学」として選手に意識付け、練習や試合の中で大きなチャレンジをすることの大切さ、自分で責任を持つことの重要性を説いた。また、「モラルがなければチームは成長しない」との立場から、「たとえば練習をサボろうとする選手も、チーム内にこれらのモラルを作っていくうちに目標に向かってまとまるようになる」といい、「誰かが何かをやってくれる」という依存した思考から脱却し、選手の自立性が育つことを強調した。

 また、監督として重要な資質に「どん底を経験しているかどうか」という点を指摘。あきらめたり、逃げたりできない状況の中で培われる決断力や、ぶれのない指針を示すことで生まれる強さがあり、「人間は皆、本質的に人間らしい強さを持っている。それを引き出すことも監督のひとつの仕事」と述べた。

 最後に、産業社会学部生らとの座談会のなかで岡田氏は、現代社会においてスポーツが持つ意味についても言及。物質的に豊かな社会においては、スポーツは「自分で課題を設定し、達成感を得られるもの。徐々に家畜化されつつある人間を脱却させるための装置」であり、「人間として生きるために『感動』を与えるもの」と位置付け、講演を締めくくった。