2007年2月17日 (第2802回)

京都における日本画の近代化

文学部教授 島田 康寛

 明治時代を迎えて、日本の伝統絵画は西洋絵画との対峙を迫られ、西洋絵画の長所を採り入れ、伝統的日本の絵画の短所を補うことで「近代の日本画」を作り上げるという課題に直面した。

 京都においても竹内柄鳳らによって日本画革新の様々な試みがなされたが、次の世代に至って、明治末から大正期にかけて、より大胆な運動が展開された。

 その最も華やかで実りも多かったのは土田麦僊、小野竹喬、村上華岳、榊原紫峰らを中心とする国画創作協会の活動である。彼らは積極的に西洋絵画の写実性を採り入れるとともに、印象派や後印象派のゴッホ、ゴーギャン、ルノワール、セザンヌらから、ルネサンス期のジオットやレオナルド・ダ・ヴィンチなどにも注目しただけでなく、中国宋元の院体花鳥画や日本の桃山時代の障壁画などをも参照して、極めて個性的で活き活きとした作品を生み出した。この国画創作協会の画家たちの背後にあったのは大正期を支配した「白樺」派の人道主義、個性主義で、時代思潮の絵画化という意味でも彼らの作品は注目される。

 スライドで作品を紹介しながら、彼らの足跡を検証したい。