08
薬学部
服部 尚樹 教授(薬学部長)
Contents
コロナ禍で授業や実習は
どう変わったか?
コロナ禍でのWEB授業は
いかがでしたか。
他の先生方と同様、授業の準備に苦労しました。WEB授業では、資料のパワーポイントに解説を録音して学生に視聴してもらいました。一つの講義で40~50枚のスライドを使いますが、著作権の関係で図を自分で描くこともあり、かなり時間を要しました。対面の授業だと学生の反応を見ながら分かりやすく言い換えたり、板書をしたりしてフォローできますが、WEBでは学生がどれだけ理解できているのか分からないので少し不安でしたね。学生の理解を確認するために授業後に毎回小レポートを出してもらいました。WEB上で質問してくれる学生もいましたよ。授業やテストに対する学生の反応を心配していましたが、学びの深い授業だったとアンケートで答えてくれる学生もいて少しほっとしました。
薬学部は実習もあります。
WEB以外の授業は
どうされていますか?
実習は実際に手を動かさないといけないので、WEBでは行えません。毎回の検温、マスクやフェイスシールド(またはゴーグル)の着用、実習室が密にならない座席配置と十分な換気、発熱した場合の報告と自宅待機指示など感染対策はしっかりやっています。研究室での卒業研究も密にならないように、日程を調節するなど人数を制限して実施しています。
コロナ禍を通して
学生の様子に変化はありましたか。
やはりWEB授業が多いこともあって、部屋に閉じこもりがちになっていると思います。友人との交流が減って、情報が入らないために、就職活動にも影響があるようです。コロナ禍では、自分から積極的に行動して情報を取りにいかないといけません。教職員からもホームページやmanaba+R(授業支援ツール)で様々な情報を発信していますのでこまめにチェックして下さい。
薬学の観点からみる
検査やワクチンとは?
現役の医師でもある先生から見て、
新型コロナウイルスの検査について
どうお考えですか?
多くの人が検査結果を信頼していますが、完璧な検査はありません。新型コロナウイルスの診断に用いられているPCR検査では、感染している人にきちんと陽性反応が出るのは7割くらいと言われています。検体の不完全採取が主な原因です。逆に、感染していない人に陽性反応が出る確率は0.1%程度と言われていますが、滋賀県民140万人全てにPCR検査をすると1400人もの人が感染していないのに陽性と診断されてしまいますのでこちらも問題です。また、抗体や抗原検査になると感度や特異性の問題のために、さらに精度は低くなります。検査結果を100%、信頼してはいけないものだと考えましょう。
治療法がいまだに確立されていない
新型コロナウイルス。
ワクチンについては
どのようにお考えですか。
ワクチンは、従来の不活化ワクチンに加えRNAワクチン、DNAワクチンなど新しい種類のワクチン開発が進んでいます。日本を含め各国が急いで新型コロナウイルスのワクチン開発を行っていて、実用化が期待されていますね。しかし、新型コロナウイルスは未知の部分も多く、ワクチンを開発できない可能性や、開発できたとしても、新型コロナウイルスの型が変わったり、抗体が長く持たなかったりして効果があまりない可能性も考えておかなくてはいけません。また、ワクチンは人によっては副作用が出る場合もあります。治療法は早く見つかってほしいですが、スピードを重視しすぎて不完全なワクチンが世に出ることは避けなければいけませんね。
ウィズコロナ・アフターコロナを
生き抜くために
ウィズコロナ・
アフターコロナにおいて
大学はどうあるべきだと
思われますか?
大学ではやはり対面授業も大事だと思います。今後薬剤師の仕事は大きく変わり、人と人とのコミュニケーションから医療を提供することが重要になっていきます。対人能力を身につけてもらうためにも、感染には十分注意しつつできるだけ対面で授業や実習を行いたいです。また、友人・教職員との交流やサークルなど実際にキャンパスに来て、大学生らしい楽しみも味わってもらいたいと思っています。
今後オフラインでの交流を
増やしていくことは
可能なのでしょうか。
新型コロナウイルスは人の動きを一度、完全に止めてしまいました。今後、疫学によって新型コロナウイルスに感染しやすい・感染しにくい状況が明らかになってくると思います。そうすれば、ある特定の状況に注意しつつ、それ以外の場所では安心して暮らせるようになるのではないでしょうか。科学の力で新型コロナウイルスの病態が解明されて治療法や予防法が確立されていけば、以前と同じとはいきませんが新しい生活様式の下での人と人との交流が生まれていくのではないかと思います。
使用写真:2017年撮影、取材日:2020年8月26日