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キーワードは「新しい価値の創造 」。
アフターコロナの食のあり方とは。

食マネジメント学部
田中 浩子 教授

Contents

新型コロナの影響について

型コロナの感染拡大に対し、
どのように行動されましたか。

人類の歴史は感染症との闘いの歴史であることは、大学生の時に公衆衛生学を履修したので知っていました。最近は感染症の大規模な発生がなく、危機感が薄れてその備えを忘れていたのかもしれません。新型コロナウイルスの感染は2020年2月ごろから日本でも拡大し、深刻な事態となりました。感染の長期化が予想されたためすぐに動き始め、3月に予定していた対談の仕事もオンラインに切り替えて実施しました。もともと新しいコトをやってみたい性格で・・・Zoomによるオンライン対談を経験してみて、これはいろいろなことに使えると思いました。

授業はZoomを使い、ライブ形式にこだわっています。オンラインでは学生同士のコミュニケーションを図るのが難しいという声も聞きますが、ゼミではZoomの機能を活用してグループ分けをおこない、少人数で話し合いの場を設けてから全体のディスカッションに入ってもらうなど、学生が発言しやすい仕組みづくりを工夫しています。


ンラインへの切り替えはスムーズだったのですね。
学生たちの反応はいかがでしたか?

概ね、集中して授業に取り組めているようです。オンライン派の学生も多いですね。100人を超える講義であってもコミュニケーションをしっかり図りたいと思っていましたので、Zoomのチャット欄を使って、感じたことや質問など、どんどん入力してもらうようにしました。大教室での授業では、なかなか手を挙げて発言をするのは勇気が要りますが、チャット欄だと気軽に投稿できるようです。対面授業の何倍も、いえ10倍以上質問があるように思います。


生活での変化はありましたか?

移動時間が無くなり、時間の余裕ができたのでヨガを始めました。東京の先生にオンライン指導を受けているのですが、そこでもやはりライブの良さを感じました。動画を観てマネをするだけではなく、その場で直接指導してもらえると、やはり楽しいですね。また、他県に住む元同僚と一緒にレッスンを受けられるのはオンライン会議システムがあるからこそ実現したコトだと感じています。他には、冷凍専用庫を購入しました。飲食店の休業や営業時間の短縮により、持ち帰りや配達を始める店が増えました。今までは、遠方まで出かけなければ味わえなかった名店の料理を、冷凍状態で簡単に取り寄せできるようになりました。実際にお店に行かないと体験できないコトも多いのですが、単調になりがちなウィズコロナの生活において、ハレの外食を自宅に持ち込むことができたのは大きな変化です。

日本の「食」はどうなるか

ロナによって
「食」のあり方は

変わったのでしょうか?

「食」にはレストランなどでの外食、家で調理して食べる内食、調理済みのものを買って家や職場・学校などで食べる中食があり、それぞれに楽しみやメリットがあります。コロナによって内食が拡大したという変化が見られました。「食」にはおなかを満たすだけでない役割があり、中でも「共に楽しむ」ことが重要な価値とされています。これはオンラインになって食のスタイルが変わっても揺るがない根源的なニーズです。コロナ禍においても、家で子どもと一緒に料理を楽しんだり、友人と一緒にオンライン飲み会を開いたといった話は皆さんも聞かれたことがあると思います。いま、コロナによって社会が急激に変化する中で、先端技術を取り入れながら、新しい価値を創ることが課題だと考えています。


は、外食を担う飲食業界は
どのように変わるのでしょうか?

飲食業界においては、機械化が進んでいくでしょう。そこで、機械化する部分と人が行う部分のバランスを上手くとることが重要になると思います。例えば、回転寿司が業界で成長しているのは、入店から注文、配膳、会計まで機械化が進んでいることによって利用しやすい価格になっているという理由に加え、個別ブースでテーブルを囲んで食事ができるといった、人々が求める「共に楽しむ」という要素を上手く残しているからです。機械化で低価格が実現でき、かつ、テーブルを囲んでみんなで食事を楽しむハレ感もある。そのバランスが受け入れられたのだと思います。このような、機械と人の均衡を探っていくことが、ビジネスチャンスになるでしょう。


、外食産業では営業自粛などが求められ、
かなり苦しい状況だと思います。

そうですね。コロナだけではなく、人口減少も大きな課題なのでこれからの外食産業には、社会によるサポートの充実が必要になるでしょう。世界ではCSA(Community Supported Agriculture:地域支援型農業)が注目されていますが、その外食産業版のようなものです。現在も「さきめし」プロジェクトなどさまざまな支援がなされていますが、地域が協力し合い、提供側と利用側の両方がそれぞれの欲求に折り合いをつけていく必要があります。最近は、ファミレスやスーパー、コンビニでも早い時間に店仕舞いするところが増えましたよね。「夜中まで営業していたら便利だけど、みんなで早く帰ろう」というように、利便性をだけを求めるのではなく、社会全体で協力する体制を構築することが求められます。アフターコロナの世界では「外食したい」という気持ちはもっと強くなるでしょう。そのために、機械と人の折り合い、提供側と利用側の折り合いをつけながら外食産業を支えていかねばなりません。

いま、 私達に できることはなにか

生の皆さん、
特に就職活動の時期を
迎えた学生は不安も多いと思います。

初めての経験で戸惑っている人も、ネガティブになってしまう人もいるでしょう。しかし、就職活動においては、この状況を有利と捉えることもできます。これまでは立地の関係で行けなかった遠方の企業も受けられますし、オンライン面接なら移動時間のロスなく次の面接に参加できる。そういう意味では今までよりチャンスが広がっているとも言えます。必要以上に恐れず、「まずは行動してみる」をモットーに動いてほしいですね。こうなりたい、という思いを持って走り出してください。


「行動を起こす」には、
何から始めればよいでしょうか?

まずは挨拶をする、掃除をする、先のことばかり考えないで目の前の課題を仕上げる。そして、「縁と運と勘」を大切にすること。「縁」も「運」も雨と同じように私たちの周りに平等に存在していると思っています。やりたいことを多くの人に語っていれば、そのようなチャンスがあるときに声をかけてもらえて「縁」は繋がる。「運」は自ら動くこと。雨は平等に降っていますが、家に居ては恵みの雨にあたることはないんです。「勘」は、常に課題をもち、それを研ぎ澄ますことによって鋭くなります。たくさんの課題を作っておく、まるで地面に多くの穴を掘っておくように。そうすれば、関連した情報が流れてきたときにしっかりと捕まえることができます。普段から課題を持っていないと、何かが降ってきても上滑りするだけで、流れてきたことさえ気づかないということになってしまいますからね。

ウィズコロナで気づいたことがたくさんあると思います。それをアフターコロナの世界にも取り入れて「新しい価値」を創造する。今は行動が制限されていますが、この状況の中でも時代は止まっているのではなく、前へ前へ進んでいます。

取材日:2020年7月22日

Message

まずは行動して、
いまの時点での結果を出してみましょう。
〇でも×でも△でも良いのです。
あの時やってれば、やってたら・・
というのは避けたい。
そして行動した先で、
未知の自分に出会う面白さを
感じてほしいと思っています。

Profile

田中 浩子教授

所属 / 食マネジメント学部

専門分野 / 食品流通、マーケティング

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