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今こそグローバルなつながりを。
国際協力がアフターコロナを
乗り切る力になる。

国際関係学部
足立 研幾 教授

Contents

コロナ禍での
教育のあり方とは

ロナ禍での授業について
どのようにお考えですか。

国際関係学部は特に海外との交流が多い学部です。海外に行けない状況下でどう学びを深めるかが課題だと感じています。また、オンライン授業でも、いかに対面授業と同じ、あるいはそれ以上の効果を生み出すかが重要だと思います。講義室では歩き回って授業を行うので学生たちの反応を直に感じ取ることができましたが、オンラインではそれが難しい。できる限り双方向のやり取りができるよう、学生からのコメントに対し、次の授業で返答するといったことを心掛けています。


生のゼミは留学生も
多いと聞きましたが、
学生の様子はいかがですか。

来日できず、母国に残っている学生はオンラインで授業を受けています。現地に行かずとも海外の大学の授業を受けられるのは良い面もありますが、やはり日本に来られなくて残念だという声を聞きます。また、日本に残っている留学生たちも、せっかく京都にいるのに街に出ることができず、日本を肌で感じられないことにフラストレーションを溜めているようです。留学の醍醐味である海外での日常生活が送れないため、コミュニケーションの機会が減っていることを学生たちは残念に思っているようです。この問題を少しでも解消するため、オンライン授業の前後に雑談の時間を設けて日常的なコミュニケーションの機会を増やせるようにフォローしています。


ンライン授業の
良い点はどこでしょうか

学生たちの様子を見ていると、オンライン授業の方が理解度が高いと感じる場面があります。オンラインの方が積極的に発言できるという学生もいます。オンデマンド授業の場合は動画で配信されるので、自分のペースに合わせて巻き戻したり早送りしたりして受講できる。今後は、復習用教材として展開するのも一つの方法ではないでしょうか。オンラインと対面のいいところを取って、ハイブリットな授業を考えていきたいと思っています。

国際政治や日本社会は
今後どうなるか

ロナ禍において、
先生が気になった
トピックスはありますか。

政治学の観点では、平常時には気付かなかったことに目を向けられる期間でした。政府の感染症防止対策や経済対策は自分たちの生活に直結する問題だったため、政治をより身近に感じ、関心が高まった人が多いのではないでしょうか。コロナ禍を通して各国の政治の在り方やリーダーの比較がなされ、望ましいリーダーとは何か、必要な対応とは何かを一般の人が考える大きな機会になった。この動きが続けば、政治の改善にもつながるのではないかと期待しています。


ロナ禍における各国の対応は、
自国第一主義が目立っている
ように思いますが、

なぜそうなるのでしょうか。

情報が多様化し、政治に関わる情報発信が狭い範囲の人に訴えかけるものとなっていることが要因の一つでしょう。SNSが政治の手段となったことに伴い、限られた人々の利益になる政策を進めることで、より権力を得やすくなりました。この変化が、自国だけが良ければいいという自国第一主義に拍車をかけています。一方で、新型コロナウイルス関連の情報発信は、フェイク情報での操作が通用しません。そういう意味では新型コロナウイルスの蔓延によって、今後はSNSを用いて、フェイク・あるいは不正確な情報を流してでも、一部の人に訴えかけて権力を手にする、というやり方が通用しなくなるかもれないと考えています。世界の人々が、狭い範囲を見て行動するのではなく、世界的な視野をもって一致団結して動くことの大切さに気付くきっかけになってほしいと思います。


は、これから
日本はどうすべきでしょうか。

新型コロナウイルスは国境を超える国際的な問題です。各国が自国第一主義になっている時こそ国際協力の重要性を今一度再認識し、日本には世界をリードしてほしいと考えています。人の命を守る「人間の安全保障」という考え方がありますが、日本は1990年代の終わりからこれを推進し、この分野のリーダー的存在として世界でも認知されています。さらに、SDGsが掲げる“誰一人取り残さない”世界の実現といった観点も、人間の安全保障とかなり関係が深く、国際社会で非常に重要な考え方です。日本にはこれまでのリーダーシップを生かして、世界に働きかけることが求められます。また、人々の自由や権利を守りながら新型コロナウイルスを封じ込めようとする日本モデルは、海外から注目を浴びています。民主主義や人権、自由などを守りながらいかに新型コロナウイルスと闘うのかを考える上でも、日本がリーダーシップを発揮する余地は大いにあると思います。

いま、大学でできることはなにか

フターコロナの世界で、
私達はどう生きるべき
でしょうか。

コロナ禍が収束しても、世の中は元通りというわけにはいきません。生き残るのは、来たる新しい時代に対応できる人。学生の皆さんはデジタルネイティブ世代でたくさんの情報に触れ、柔軟な考えができる人たちですから、今何ができるのかをじっくりと考えてみてください。きっと何か新しいものを生み出す力につながるはずです。特に国際関係学部には、海外で何かしたいと考えている学生が多い。今は外に出られずやきもきしていると思いますが、こんな状況だからこそ、深い学びを得るための準備期間として有効に活用してください。実際、事前の準備なしで留学に行っても、得られるものは限られてしまいます。事前に知らないと気付けない学びが現地にはたくさんあるので、ぜひ行く前にいろいろと調べてみてください。今は、これしかできないと考えるのではなく、今できること、身につけられることをしっかりとしておこうと考えることが重要です。それがアフターコロナの世界を生き抜く財産になり、また皆さんが飛躍するきっかけになるかもしれません。


生の皆さんに、
大学をどのように
活用してほしいですか。

大学の価値の一つは、さまざまな情報にアクセスでき、さらにその情報を解釈する力も養うことができる点。そして、もう一つの価値は、同世代が多く集まるためネットワークを構築しやすい点です。大学時代に築いたネットワークは、社会に出てからも大変役に立ちます。オンライン中心の大学生活になり、新たなコミュニティを創るのは難しい面もありますが、オンラインでも、あるいはオンラインだからこそ、創れるコミュニティもあります。積極的に人脈や知識の幅を広げる活動の場として大学を活用してほしいです。


理の枠を超えて
交友関係を広げることが
できるのも、
総合大学の魅力ですね。

文理の枠を問わず知をむすびつけ、知の横のつながりを広げることは重要です。正解のない問いに対する答えを見つける力を養うことが鍵になりますから、その手法を大学の教員たちからヒントを得てぜひ身につけてもらいたいですね。アフターコロナの世界では、「その人でないとできないこと」を持っているかどうかが問われるでしょう。自分の知を広げ、総合的な力を身につけたうえで、ぜひ「自分にしかできないこと」を模索してください。

Message

アフターコロナの世界で
飛躍するためには、
今できることをじっくりと考え抜くこと。
大学に集約された知や
ネットワークを生かし、
「自分自身にしかできないこと」を
身につける準備期間として
大学を有効活用してください。

Profile

足立 研幾教授

所属 / 国際関係学部

専門分野 / 国際政治学、軍縮・軍備管理論、グローバルガバナンス論、市民社会論

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