Report #02

ゲスト、仲谷善雄総長、松原洋子副総長、会場に駆けつけた参加者によるChat

野中准教授より、食のシステムデザインについて解説いただいた後、仲谷総長、松原副総長、そして会場に駆けつけた参加者の皆さんがそれぞれの想いを語りました。

松原
興味深いトピックからロボットの実演デモまで、皆さんさまざまな情報と刺激を得られたと思います。まずは仲谷先生、野中先生への質問やコメントはいかがでしょうか?
仲谷
野中先生と初めてお会いしたのは、食マネジメント学部を見学に行ったときのことです。システム工学の専門家が食マネジメント学部で何をしているのかなと、まず興味を持ちました。今日、先生が今まで手掛けてきたことを改めて聞いて、「自動車から食へ」というのはなかなかすごいなと思いました。システム工学という点で通じるところはあるのだろうけれど、気持ちの上ではどんな切り替えがありましたか?
野中
私は、大学院生のときはシステムデザイン・マネジメント研究科に所属していたのですが、この学科は「世の中のあらゆる対象をシステムとして捉えたときに、大規模で複雑化する問題に対してシステム工学のアプローチでどう対処できるか」を思考している大学院でした。宇宙開発関係のものづくりを研究している学生もいれば、法学体系をシステムとして捉える研究をしている弁護士もいたりします。自動車、日本酒、ロボットと研究対象が移っていく過程でも「システムとして捉えている」という意味では共通なので、自分にはあまり違和感が無かったんです。
松原
方法論や技術は基本的にシステム工学にあるけれども、何かのきっかけで異なる環境に入ったときに新たな出会いがあって、研究対象が広がっていく。それは「まったく別のことに取り組む」わけではなくて、ご自身の方法論が別の形で生きていく、ということなのですね。
さて、ゼリーに関する質問も来ています。まず「おいしいゼリーの商品化はまだですか」。
野中
共同研究しているユキオー社といろいろな可能性を模索しながら、どこから商品化するかを検討中です。2020年3月のサウス・バイ・サウスウエストへの参加を一つの足がかりにして、どう展開していけるか検討を進めていけると思います。
松原
「ゼリーは、例えば宇宙空間への応用可能性はありますか」という質問についてはいかがでしょうか。
野中
まさに先日、宇宙関係の方と議論させていただきました。宇宙飛行士の方が宇宙滞在中にアルコールを飲めないのは、有事に対応しなければならないという理由が大きいそうですが、民間の方が今後、楽しみとして宇宙旅行に行けるようになったら、宇宙で日本酒ゼリーやワインゼリーを楽しむことは大いにありうると思っています。
仲谷
私も先日、日本酒ゼリーをいただきましたが、ゼリーだから思わず食べてしまうんです。その量を一気に飲んでいるようなものなので、けっこうお酒が回りました(笑)。システム工学の観点から食という切り口でいろいろできるという可能性を見せてもらえて、非常に楽しかったです。

松原
「日本酒ゼリーを通して各地の酒蔵や地域の再発見の機会になるといいですね」というご意見もあります。
野中
本当にそうですね。冷蔵せずに輸出できるようになれば、日本酒を本来の味わいのまま世界各地に届けることができます。果物であれば、種やロジスティクスの問題で輸出できない地域にも、ゼリーにすることで果物そのままのおいしさを届けられる可能性が出てきます。各地のおいしい食材のカプセル化は、ぜひやりたいと思っています。