対談企画
SPECIAL
今、なぜ「宇宙地球フロンティア研究科」が必要なのですか?
「宇宙の利活用が地上のビジネスを変えている」
「多様な人材が宇宙で求められている」
2028年の開設に向けて構想中の、宇宙地球フロンティア研究科。
今、なぜ「宇宙・地球・フロンティア」なのか?なぜ立命館なのか?
他の宇宙関連の研究科にはない特徴や強みは?
着任予定の先生方5人に聞きました。
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中須賀 真一
Shinichi NAKASUKA
立命館大学総合科学技術研究機構・教授、立命館大学学長特別補佐
2028年4月より宇宙地球フロンティア研究科・研究科長就任予定 -
佐伯 和人
Kazuto SAIKI
立命館大学総合科学技術研究機構・教授、立命館大学宇宙地球探査研究センター(ESEC)・センター長
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小林 泰三
Taizo KOBAYASHI
立命館大学理工学部・教授、立命館大学宇宙地球探査研究センター(ESEC)・副センター長
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長岡 央
Hiroshi NAGAOKA
立命館大学総合科学技術研究機構・准教授、立命館大学宇宙地球探査研究センター(ESEC)・メンバー
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仲内 悠祐
Yusuke NAKAUCHI
立命館大学総合科学技術研究機構・准教授、立命館大学宇宙地球探査研究センター(ESEC)・メンバー
今、なぜ「宇宙地球フロンティア研究科」が必要なのですか?
CHAPTER
#1 FRONTIER
世界的に宇宙の利活用が広がり、国の予算も増えた今、
人材育成が急がれている
Theme
2028年4月の開設を目指し、宇宙地球フロンティア研究科の設置構想が進められています。今、なぜこの研究科が必要なのでしょうか?
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中須賀 -
今、世界的に宇宙の利活用が広がっています。
私の専門である人工衛星の分野では、衛星をロケットで打ち上げるだけでなく、その衛星を利用したビジネスが、通信、放送、エンターテイメント、教育、農業など、幅広い分野で始まっています。月探査の分野でも、単に月を探査するだけでなく、将来的な月面基地の建設や人類の居住を見据えた準備が進められています。
日本でも、宇宙関連の予算がこの5年間で3倍に増えました。宇宙を基幹産業の1つとして位置づけようという強い意志の表れだと思います。
しかし、いくら予算を増やしても、人材は急に増やすことはできません。今は、宇宙のどの分野においても、人材が不足している状況です。大学にとって、新しい人材の育成は非常に大切な仕事であることから、宇宙人材を育成する研究科の開設が必要だと考えました。
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佐伯 -
宇宙探査の分野でも、天体の軌道を周回しながら調査する段階から、今は、月面や火星に着陸して基地を建設し、探査を行う段階へと移行しつつあります。さらには、月や火星に存在する資源を調査し、それを活用しようとする取り組みも始まっています。人類の生活の場が、地球から宇宙へ広がろうとしているのです。
科学者やロケット研究者だけが宇宙に行く時代は終わります。今後は宇宙で求められる役割や人材の種類がますます広がり、多種多様な職種の人たちが宇宙で活動するようになるフェーズへ移行するでしょう。
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小林 -
私の専門である土木や建設の分野でも、今は地上で活躍している人材、地上で使われている技術が、今後は宇宙でも展開されるようになるでしょう。幅広い分野の人が宇宙に関わる時代になりつつあることを強く感じています。
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中須賀 -
宇宙でのさまざまな活動は、幅広い分野の人々が一緒に仕事をすることによって初めて実現します。こうした時代の変化を踏まえると、多様な専門分野を備えたうえで、宇宙で活躍できる人材を育成するための研究科を立ち上げることは、大学にとって非常に重要な使命だと考えています。
#2 FRONTIER
学内の宇宙地球探査研究センター (ESEC)と連携。
学問分野を横断する総合力を持った人材を育成
Theme
立命館大学がこの研究科を新設することに、
特別な意味はあるでしょうか?
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佐伯 -
これまでは、各大学に宇宙開発や宇宙探査の研究室が独立して存在し、それぞれが孤軍奮闘している形が多かったのではないかと思います。一方、立命館大学には2023年設立の宇宙地球探査研究センター(ESEC) という研究拠点があるため、宇宙地球フロンティア研究科の研究室はすべてESECに結集するという形を作ることができます。ESECには、理学や工学の教員だけではなく、マネジメントの教員、今後の有人探査を見据えた心理学をはじめとする人文社会科学の教員、資源を産業的に使う際に重要となる法学の教員などもメンバーとして加わっています。宇宙地球フロンティア研究科は、この確固たるベースの上に新設されるわけです。もちろん、研究科の中にも理学・工学・マネジメントを専門とするさまざまな教員がいて、互いに連携しながら人材を育成することができます。これが、立命館大学に宇宙地球フロンティア研究科が新設されることの大きな強みだと考えています。
また、関西に新しく宇宙開発拠点ができることは、日本の宇宙開発、宇宙探査の観点においても非常に大きな意味を持つと考えています。現在は、宇宙関連の拠点や試験設備が関東に集中している状況がありますが、関西に拠点があれば、本学の試験設備を関西の企業の方にも使っていただけますし、人材育成に関しても連携できるからです。
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小林 -
立命館大学は17学部、22の研究科を持つ私立総合大学です。文理問わず多様な学問分野の教員が在籍しています。この総合力を活かせるのも、立命館大学の強みだと考えています。
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中須賀 -
宇宙開発、宇宙探査は、大学の中だけではなく、企業との連携が非常に重要です。関西には、宇宙分野の事業にまだ乗り出していないものの、大きなポテンシャルを持った企業がたくさんあります。こうした関西の企業と何ができるかを考えていくことも、私が立命館大学でやりたいことの一つです。
コラム
入学までにどんな準備が必要でしょうか?
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長岡 -
学部は基盤となる知識を身につける場、大学院はその知識を使って自分がやりたいことを実現する場です。一番大切なのは、自分が何をやりたいかを明確にすることだと思います。宇宙に行くことは難しく、研究としてすぐに成果が出るものではありません。だから、皆さんの学んできた分野の技術や知識をどのように宇宙に活かすかを考え、自分のやりたいことへのモチベーションを保ち続けながら研究することが必要です。
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仲内 -
実は、私は学部では地球惑星科学を学んでいません。「やりたい」という気持ちだけで、違う分野の研究科に飛び込んだのです。大学院の先生からは、必要な勉強は今からでも十分にできる、やりたいと思うことをいつくも持っておけば、必ずどこかで実現できると言っていただきました。一歩踏み出して飛び込む勇気を持つことと、自分のやりたいことを決して忘れないこと。これが大事だと思います。
#3 FRONTIER
宇宙の開発・利用に必要な「理学×工学×マネジメント」を学べる日本初の大学院
Theme
宇宙地球フロンティア研究科の特徴や強みを教えてください
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中須賀 -
宇宙地球フロンティア研究科は、理学×工学×マネジメントを横断的に学ぶことを一つの大きな特徴としています。
宇宙の開発や利用は、いわゆる宇宙工学と言われる工学の技術だけでは成り立ちません。理学やマネジメントをはじめとする多様な分野を寄せ集めて初めて活動ができる分野なのです。
私も、これまでは東京大学工学部内の一つの小さな世界の中で、衛星作りを通して宇宙活動に携わってきました。しかし本来はそれではダメだと思います。例えば、理学系の先生方と一緒に、宇宙で観測したデータから何が分かるのか、それを次へどう繋げていけるのかを考えたり、人文社会科学の先生方と一緒に、宇宙の技術をどう利用していこうかと議論したり、さらには、これらのさまざまなテーマ全体を大きく見ることができる、そんな研究科が必要なのです。宇宙地球フロンティア研究科は、このような分野横断型の研究科であり、さまざまな専門性を持った教員や学生が集う研究科になる予定です。
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小林 -
一つの研究科の中で、理学×工学×マネジメントをすべて学べる仕組みがあるのは日本で初めてではないでしょうか。一つの大きなチームの中で、さまざまなバックグラウンドの先生と一緒に学ぶ。これは極めて特徴的なカリキュラムだと思います。
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佐伯 -
私は鉱物や岩石の専門家ですが、月探査を行う際は、そのための観測装置を自分で作る必要がありました。ものづくりが好きだからできたのですが、体系的に学んだわけではないので、すごく遠回りもして、現場で紆余曲折の末に知識と技術を身につけました。プロジェクトをどのようにマネジメントするかについても同様に苦労しました。
宇宙地球フロンティア研究科では、このような経験を活かして、理学×工学×マネジメントを網羅しつつ、短時間で密度の濃い学びが実現できるカリキュラムを編成し、実際の探査プロジェクトを遂行できる人材を育てたいと思います。
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中須賀 -
工学と理学のインタラクションはすごく大切ですね。例えば観測のためのセンサーを作る際にも、理学を理解している人が作るからこそ、目的に合ったよいものが作れるという面もあるのではないでしょうか。
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佐伯 -
その通りです。また、幅広い分野の人材が集う宇宙分野では、自分の専門分野以外のことに関して「この知識を持つ人がどこにいるか」という情報も大切です。地球宇宙フロンティア研究科では、理学が得意な人、工学が得意な人、マネジメントが得意な人など、それぞれの得意分野を持つ修了生が、社会のさまざまな分野で活躍することになります。「このことに詳しい仲間があそこにいる」という情報を持っていることは、社会に出てからも大きな力を発揮するのではないかと思います。
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中須賀 -
小林先生の専門である建設の分野では、法律の専門家や国交省などの行政をはじめ、さまざまなところとのインタラクションが必要だと思いますが、これは宇宙にも適用できるのではないでしょうか?
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小林 -
そうですね。建設は、さまざまな分野の技術や知識を組み合わせることが必要な総合技術であり、法律や制度面を整備してどのように実装するのかも非常に大事です。そういった点では、さまざまな分野の人が集う宇宙プロジェクトの遂行にもつながる部分があると思います。
#4 FRONTIER
プロジェクトベースの学びを重視。
実際の宇宙ミッションに参加しながら学ぶチャンスも
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小林 -
宇宙地球フロンティア研究科のもう一つの大きな特徴は、授業の中に実験やプロジェクト、フィールドワークを取り込み、理論だけではなく、実際に手を動かし、プロジェクトベースで学ぶことができるという点です。具体的には、実際にフィールドに出たり、企業と共同研究を行ったり、実際の宇宙ミッションに関わったりというものです。そこでは、理学部出身の人も、工学部出身の人も、人文社会科学系学部出身の人も、一緒になってプロジェクトを進めていきます。これはとても実践的で、社会実装を進める上でも非常に力になる学びだと考えています。
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中須賀 -
座学でしっかり学んだ上で、プロジェクトベースの学びを通して実際に身につけていくというイメージですね。
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佐伯 -
地球周回分野から宇宙探査の分野まで、本物の国家プロジェクトに参加し、今も関わっている教員がたくさんいるということも、この研究科の非常に重要な特徴だと思います。
先生方がどんなプロジェクトに関わってこられたか、それぞれご紹介いただけますか?
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仲内 -
私は、大学院時代から「はやぶさ2」プロジェクトに関わってきました。大学院生だった私の、まさに目の前でプロジェクトが作られ、進行していたのです。データが下りてくると「どこからサンプルをとってくるんだ?」など、激しいディスカッションが行われていました。もちろんすべて英語です。全員が自分の主張を絶対に譲りません。でも最終的には全員できちんと意志を統合し、着地していくのです。私は、その現場を間近に見ながら学んできました。
その後は小型月着陸実証機「SLIM」プロジェクトの研究開発員となり、現在は月極域探査機「LUPEX」、さらにその次の月面資源探査計画「LUNAR-RABBIT」というミッションが始まったところです。これまでは月を目指していたプロジェクトが、今後は火星も目指していくことになり、月で使われる技術が火星にも使われるということを意識しながら開発をしています。
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小林 -
私も、以前から月の研究に関わってきました。主に、月面で基地を建設するための研究です。地上でも、建物や施設を建設する前には必ず地盤調査が必要です。地層の状況や地盤の硬さなどを調査しなければ、何も建てることができません。このプロセスは月でも必要になると考え、現在、月面の地盤調査を行うための装置を開発しています。近い未来の話としては、2027年にアメリカの民間企業が打ち上げる予定の月着陸船に、小型の地盤調査装置を搭載するプロジェクトに参画しています。宇宙戦略基金(第二期)では、2030年頃の打ち上げを目指して、さらに本格的な地盤調査の装置も開発しています。
地盤調査の結果に基づいて、建物を設計して基地を建設していくことになると、さらにたくさんの課題が出てくることになるでしょう。宇宙地球フロンティア研究科では、こうした課題の解決に向けて、様々な分野・機関と連携しながら研究を展開していきたいと考えています。
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中須賀 -
私は、2003年に世界で初めて1㎏という小さな人工衛星を打ち上げて以来、100㎏以下の超小型衛星16機の開発、打ち上げ、運用に取り組んできました。この超小型衛星を使ったさまざまな活用方法を検討する中で、5社の衛星開発のスタートアップ企業が立ち上がり、ビジネス活用もどんどん進められています。さまざまな企業と組んで新しい小型衛星の活用法を開拓していますので、立命館大学でも学生と一緒に続けていきたいと考えています。
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佐伯 -
私は、学生時代は隕石の研究を通して小惑星や惑星の成り立ちを探求していたのですが、「はやぶさ」計画に誘われたことから宇宙探査の分野に入りました。私はマグマが大好きなので、月探査の分野に移り、JAXA月探査「かぐや」計画で初めて月探査に関わると、その後もいくつかの月探査プロジェクトに参加しました。小型月着陸実証機「SLIM」ではマルチバンド分光カメラの開発リーダーを務め、現在も、2028年度打ち上げ予定の月極域探査機「LUPEX」で観測装置の開発リーダーを務めています。
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長岡 -
私は学生時代に初めてJAXA月探査「かぐや」計画のミッションに関わり、小型月着陸実証機「SLIM」にも携わりました。現在は、月極域探査機「LUPEX」の月水資源探査計画や、宇宙戦略基金事業(第二期)の一環として進められている月面資源探査計画「LUNAR-RABBIT」で探査装置の開発を進めています。私はもともと月の隕石の分析を専門としてきましたので、今後は、月面上の狙った地点から「月の石」を採取し、地球へ持ち帰るプロジェクトを推進したいと考えています。
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佐伯 -
このように、宇宙地球フロンティア研究科には、本格的な宇宙プロジェクトに携わってきた教員がそろっています。こうした宇宙プロジェクトは、大学内にある研究拠点ESEC(宇宙地球開発センター)を中心に行われるのですが、我々は全員がESECのメンバーですから、これまでに携わってきた、あるいはこれから携わる宇宙プロジェクトの成果を、研究と教育にも展開していきたいと考えています。
宇宙地球フロンティア研究科は、我々を含め15人から20名の教員を取り揃えて、将来、月、火星、地球とさまざまなフィールドのプロジェクトで活躍できる人材を育てていきたいと考えていますので、ぜひご期待ください。