東日本大震災5年に寄せて(立命館総長 吉田 美喜夫 あいさつ)
東日本大震災5年に寄せて
あの日から1,827日が過ぎました。5年という時間を改めて「日」に置き換えてみると、東日本大震災により被害を受けた方々が、幾多の困難の中で複雑な選択を重ね、今日という日を迎えておられるであろうと想像を巡らせています。ご遺族の皆さまには、未だ癒えない苦しみを抱かれている方もおられるでしょう。何より、今なおご家族が戻らず、悲しみと共に暮らしておられる方がいらっしゃることに胸を痛めています。
学校法人立命館では、安否確認などの緊急対応の後、キャンパスを置く関西・北海道・大分の地から、震災復興に息長く貢献していくことを誓い、災害復興支援室を立ち上げました。この間、のべ1,200名を越える学生や生徒らが現地に足を運び、距離を越えた支え合いの活動にあたってまいりました。また、フィールドワークによる実践的な研究はもとより、未曾有の災害からの経験を整理し、次代へと継承すべき知見をまとめる各種の研究活動も展開しています。また、現地の方々に寄り添い、適切な間合いと言葉を選びながら関わり続けてきた学生や生徒たちは、大学や学校では決して学ぶことのできない多くの学びの機会をいただきました。
振り返れば1年前、発災から4年を迎えるにあたり、福島大学と共催でシンポジウムを開催いたしました。その際、例えば「東北では」「被災地では」、そして「福島では」などと、「簡単にひとくくりにしない」ことの大切さを改めて痛感したことを鮮明に覚えています。昨夏、東京電力福島第一原子力発電所の事故による避難指示が解除された楢葉町での復興祈念式典などの準備にあたった立命館大学生の一人は「どんなに人が少なくて、静かでも、それまでも今も、そしてこれからもずっと生きてきて、生きていくんだというエネルギーを感じました」と、お世話になった方々にお礼の言葉を述べたとききました。発災から時間が経てば経つほど、今改めて、現地の方々の目の前に広がっている世界への想像力が私たちに求められています。
昨年4月のネパールでの大地震をはじめ、今年2月の台湾での地震など、この1年のうちにも、各地で多くの災害が起こっています。引き続き立命館では、この間の活動を通じて確かな連携を結んできた地域に対し、よりよい未来が拓かれるための取り組みを重ねてまいります。そして、復興支援に携わることによって積み重ねてきた経験を、次の災害に対する知恵として携えていくことで、支援側のみならず受援側に立つことへの想像力も豊かにしていきます。それが、教育・研究機関として世界と日本の平和的・民主的・持続的発展に貢献する一助となることを確信しています。
2016年3月11日
立命館総長 吉田 美喜夫