東日本大震災から10年を迎えて
昨日、新聞の社会面の片隅に掲載された記事に目がとまりました。福島県の双葉町にある道路標識に関する記事です。双葉町はご承知の通り原発事故で住民の避難が続く町です。除染廃棄物を運ぶ大型ダンプトラックが行き交う国道6号線にあるその標識には、「中野復興拠点」、その下に「Nakano Re-Start Base」と書かれているそうです。双葉町では当初、「復興」の英訳として「reconstruction」を考えられたようですが、「再出発」するという思いを込めて、この表現にされたそうです。
10年前の3月11日、東日本大震災が起こったときには、日本中が被害の大きさに衝撃を受けました。被害を受けられた多くの皆さまの悲嘆とその後のご苦労は想像すらできないほど大きかったことと思います。10年を経た今なお、2500名を越える方々の行方がわからず、月日だけでは解決されない被災者の皆様のご心労に思いを重ね、謹んでお見舞いを申し上げます。
一方で復興に向けた動きも進んでいます。当初は、失われた生活を取り戻すという考えが主流でしたが、10年間に浮き彫りになった様々な困難を包含しつつ、時代の流れと地域の実情に合わせて新たなコミュニティー作りに取り組むという方向性もみられるようになってきたと感じています。先述のRe-Startはその象徴ではないかと考えています。もちろん、被災地のRe-Startは簡単なことではありません。それでも地元の皆さまが新たな未来に向けて動き出そうという意識が高まってきたのではないかと思っています。そのような中、震災10年の節目を間近に控えた2月13日の夜、深度6強の地震が福島県を中心とする東北を襲いました。150名を超える方が負傷され、まだまだ寒さが続く中、再度避難生活を余儀なくされている方もおられます。被害を受けられた皆さまに謹んでお見舞いを申し上げます。
今回の地震は10年前の地震の余震ということです。震災がまだ続いているということとともに、日本では自然災害とともに暮らしていかなければならないことを改めて実感させられました。これからも災害は起こりえると言うことを前提に、前に向かって進まなければならないと言うことを思い知らされました。
立命館もこれまでの10年間、東北をはじめとする被災地の皆さまとの関わりを通じて多くのことを学ばせていただきました。これからも被災地域の「新たなみらい創り」に関わらせていただくことができるのであれば、キャンパスだけでは学ぶことのできない創造性を養う貴重な経験の場になると期待しています。
これまでも、これからも、被災地の皆さまと共に歩ませていただけることを切に願っています。
2021年3月11日
学校法人立命館 災害復興支援室 室長 建山 和由