町家での企画に福島県浪江町川添民俗芸能保存会の神楽が登場しました。
2023年3月19日(日)午後1時より、新町綾ノ小路下ルにある「船鉾町会所」にて「民俗芸能の魅力に迫る」企画(災害復興支援室主催)が開催されました。
第1部は京都にある「壬生六斎念仏講中」を取り上げ、歴史作家の丘眞奈美氏がコーディネーターとなり、壬生六斎念仏講中の原田一樹副会長が実演者の立場から、川村女子学園大学の辻浩和教授が専門的な見地から、民俗芸能の縁起や壬生六斎念仏がどのように発展してきたのかなど、生活の中に生きる民族芸能を取り上げ、その魅力が紹介されました。演技の動画だけではなく、楽器や衣装の紹介なども行われました。笛も祇園囃子の時は能管、棒振囃子の時は篠笛と使い分けることなど、実際に笛を吹いてその違いをご紹介いただきました。
第2部では、福島県浪江町の川添芸能保存会の神楽を取り上げました。
浪江町は福島原発1号機による原子力災害により、住民のほとんどが土地を離れ、避難生活を余儀なくされました。原発が爆発するという緊急性から指示などはなく、各人がばらばらに避難せざるを得ませんでした。
被災から半年後、保存会の石澤孝行会長は各避難所を廻り、神楽で浪江町の人々を勇気づけようと決意します。一つひとつの仮設住宅の自治会長を訪ね、浪江町からの避難者がいるかどうか聞いて回ったそうです。時には「この被災した状況で祭りとは何事か」と叱られたこともあったとおっしゃっていました。しかし、仮設住宅で神楽を奉納すれば、涙を見せるお年寄りや笑顔を取り戻す住民の方がたくさんおられました。いつも身近にあった神楽奉納という行事は、そこに生きる人々の生活の一部であったということが強く印象付けられ、逆に保存会のメンバーがやり続ける勇気と力をもらったとのことです。
震災復興を通して活動を行ってきた話を石澤会長が話をされた後、実際に神楽が登場し、お囃子に合わせ舞を披露しました。途中の演技で、来場者数名が獅子舞の中に入り、獅子舞を大きく見せる踊りなどもあり、会場は大いに沸きました。
会場には、浪江町から関西に避難している3名の方も来場されており、神楽舞を見入っておられました。終了後は保存会の方々と浪江町のローカルな話で盛りあがっていました。
今回の企画では、人々が伝えてきた生活に取り入れられてきた伝統行事が、これほど魅力的で人々の心を揺さぶるものだということを知りました。これを機会に、本当に大切なもの、残していかなければならないものを考えていきたいと思います。