チャレンジ・ふくしま塾。×Sustainable Week実行委員会 チャレンジ・ふくしま塾。×Sustainable Week実行委員会

東日本大震災から8年の歳月が過ぎようとしています。本学災害復興支援室では、2011年12月から東日本大震災の被災地域に学生を派遣するボランティアバス企画「後方支援スタッフ派遣プロジェクト」をはじめ、数多くの復興支援活動、プロジェクト、学生と地域を結ぶ各種プログラムを継続的に行い、地域の方々と共に復興とこれからについて考えてきました。ここでは、これまでの活動経験などを踏まえ、災害復興支援室の久保田崇副室長をコーディネーターに、「チャレンジ・ふくしま塾。」(以下、ふくしま塾)※に参加した田中巴実さん(生命科学部3回生)、Sustainable Week実行委員会※の上田隼也さん(生命科学部5回生)、西野日菜さん(理工学部2回生)に、これまでにない新しい視点で、福島をはじめとした被災地のこれから、未来の都市像について語ってもらいました。SDGsを復興の取り組みとしてどのように活かし、どのような未来をデザインするのか。これまであまり接点のなかった仲間が触れ合うことで、見えてくるものとは…。

※チャレンジ・ふくしま塾。:福島県とタイアップしてより多くの学生が現地の方々と交流を深め、気づきを得ることを目的として2017年に開講したプロジェクト。
※Sustainable Week実行委員会:環境や貧困といった人類共通の課題解決に向けた2030年までの国際目標である「(17の目標と169のターゲットからなる)持続可能な開発目標(SDGs : Sustainable Development Goals )」に取り組む団体。

参加メンバー

災害復興支援室
久保田 崇副室長
 
生命科学部3回生
田中巴実さん
チャレンジ・ふくしま塾。
生命科学部5回生
上田隼也さん
Sustainable Week実行委員会
理工学部2回生
西野日菜さん
Sustainable Week実行委員会

人とつながることで社会課題に具体的なアクションを起こす

久保田副室長学生のみなさんにお聞きします。それぞれの活動内容、活動に参加したきっかけと参加してみて感じたことは?

田中ふくしま塾は2年前から始まった企画で、福島の今までとこれからを学生と地域の皆さんと共に考えることをコンセプトに活動している1年単位のプログラムです。予習としての座学を京都で学んだのち、夏休みに2度、2泊3日で福島に行き、各種フィールドワークなどを行っています。現地での見聞、触れ合いなどを通じ、福島の復興のために、自分たちには何ができるのか、そのためには何が必要なのか、どんな課題が横たわっているのかなどを考え、具体的に行動に移せるよう活動を進めています。
私自身は、2年連続で参加させてもらいましたが、同じ景色でも1年目と2年目とでは感じ方が全く違っていました。最初に福島に行った際は、「まだ瓦礫がこんなに残っているんだ」、「どこかゴーストタウンみたいだな」という印象を受けました。2年目に行った際は、「あんなに瓦礫が片付いているんだ」とか、「コンビニが開店しているんだ」、「街に少しずつ活気が戻ってきているな」など、初めて行った時には気づけなかった変化を感じることができたことは大きかったと思います。
新潟県出身で、2004、6年の中越、中越沖地震を経験しており、ボランティア活動に興味を持っていました。また、福島に祖父母が暮らしており、他人事ではなかったこと、大学生になって自分にも何かできるのではないかと思うようになり参加を決めました。実際に現地に行くことで、ニュースなどで映像をみたりするだけでは分からないこと、人々の思いなどに触れることができ、私自身も含め周りの学生も自分事として捉えることができるようになったと話しており、そうした個々の意識の変化がポイントだと感じています。

上田私も熊本県出身で、2016年に熊本地震があり、人と人との断絶、街がなくなってしまうという経験をしていたので、自分たちにも何かできないかと悶々と考えていた時、たまたま目に留まったのがSDGs、持続可能な社会に向けた取り組みでした。それまでSDGsについての知識もなく、関心もありませんでしたが、復興、新しい街づくりについて考えていく上で参考になったり、方向性が似ていると感じたことがきっかけです。
Sustainable Week実行委員会の活動は、そもそも大学、キャンパスが、学生にとって本当に目的・目標に向かって取り組む場所になっているかという点に問題意識を置き、実際にSDGsというものを使って考え、表現していこう、持続的なキャンパス、まちづくりを進めていこうというものです。学生がさまざまな場所、人、団体につながれる場所づくりが大きなテーマとなっています。例えば、地域と大学がつながり、持続可能な社会を作っていこうという活動などを行っており、草津市と友好交流協定を結んでいる福島県の伊達市との交流事業でもある「みらいKIDSにぎわい交流事業」に関わり、未来のまちづくりを担う子供たちの育成、交流などについて取り組んでいます。

西野2015年の国連サミットでSDGsが採択された時が高校2年生で、その時、学校で国際問題について考え、発表する機会があり、その頃からSDGsには興味を持っていました。さらに東北の被災地でのフィールドワークにも参加。瓦礫の撤去を手伝ったり、地域の方々と触れ合い、お話を聞くなかで防災、持続可能な社会、まちづくりに対して具体的に考えるようになりました。そうしたことがきっかけで、大学ではSustainable Week実行委員会に入りました。

久保田副室長すでに福島とSDGs、Sustainable Week実行委員会はつながりを持っているんですね。

上田BKCのある草津市と福島の伊達市が「みらいKIDSにぎわい交流事業」という小学生の交流プロジェクト(各市10人ずつが互いを行き来して交流)を行っており、Sustainable Week実行委員会がそのコーディネーター役を務め、市役所の方々と共にプログラムの開発などを行っています。
大学生と小学生がいっしょになってそれぞれのまちの未来について考えていくことはとても有意義なことだと考えており、それが福島ということにも何かしら縁のようなものを感じています。年度ごとに小学生のメンバーは変わっていきますが、プログラムを終えた後も、それぞれがつながれるような仕組みを考えており、それが継続することで、いろいろなことへの広がりや持続可能な社会づくりに役立つよう取り組んでいます。

ポイントは継続性


久保田副室長それぞれの活動内容を聞き、どんな印象を持ちましたか?

田中SDGsが持続可能な社会を考える取り組みということもあり、どれも継続して活動されているというのが印象です。ふくしま塾は単年での活動が基本で福島との関わりも学生自身が他の活動を行わなければ1年限りということになります。募集型の取り組みなので仕方のないところもありますが、Sustainable Week実行委員会とつながることで、ふくしま塾での学びを、他の被災地の活動につなげていけるのではないかと考えます。復興支援には継続が欠かせません。ふくしま塾の活動をスタートとして、さらにそれを広げていく。それが学生の成長はもちろん、地域振興、持続可能社会の構築にもつながっていくと思います。

西野アイディアを考えただけ、案を作っただけはもったいないと思います。SDGsには17の目標があり、Sustainable Week実行委員会に集まっているメンバーもそれぞれ得意分野ややりたいことを持っています。それぞれがいろいろなプロジェクトに関わっており、自発的に動ける活動に積極的かつ責任を持って参加しています。私たちの活動自体が案を考えることがゴールではなく、予算のことなども踏まえ、常に考えた案をどう実現させるか、行動に移せるかが問われているので、そういう意味では、ふくしま塾とつながることで、フィールドワークなどで培った経験を活かすお手伝いはできるのではないかと思います。

久保田副室長互いに手を組むことによるメリットは?

上田みらいKIDSについても、意見交換をすることで具体案も出てくると思いますし、学生の強みが瞬発力だと思います。今回を機にいろいろと協力できればと思います。また、それぞれのイベントや催しなどに参加することで、視野の広がりはもちろんつながりの輪、ネットワークも広がっていくと考えます。SDGsには、いろいろなものをつなげる触媒の役割も持っていると思うので、その特徴を活かせればと考えます。

久保田副室長例えば東北の高校でSDGsの出前授業やワークショップなどをふくしま塾とSustainable Week実行委員会が共同で行うなどの企画も考えられますね。ふくしま塾とは別に災害復興支援室では、岩手の大船渡市とつながりがあり、大船渡高校とワークショップなどを行っています。そこでSDGsを使って大学生と共に自分たちのまちの未来を考えていくという企画もSustainable Week実行委員会のメンバーと力を合わせれば可能となります。

田中ふくしま塾の中にも広報などいろいろな小グループがありますが、そこにSDGsの視点から未来を考えるグループを作ることもひとつだと思います。

久保田副室長一言で震災、被災地と言ってもさまざまで間口が広すぎ、何から手を付けていいのかわからない学生も多いと思います。そのフィルターの役目をSDGsが果たせるのではないでしょうか。

西野今回、少しお話をうかがっただけでもいろいろとアイディアが出てくるぐらいなので、互いに交流する場を設け、できることを話し合っていければと思います。SDGsでやるべきことをコミットすることで、具体的にできることも増えるのではと考えます。

上田お互いの活動を広めていくという意味でも、学園祭などで各種団体がそれぞれのメリットを生かして討論したり、建設的に話し合う場を設けたりすることも今後は必要になってくると思います。

SDGsの活動も復興支援も、それぞれを他人事ではなく自分事として捉えることが重要

久保田副室長今回はじめて二つのグループの代表が顔を合わせ意見交換したわけですが、これまでの話を踏まえ今後の展望などについて意見を聞かせてください。

田中今回お二人にお会いするまでSustainable Week実行委員会については、ほとんど知らなかったのですが、お話を聞き、やる気や行動力を含め、触媒としていろいろなものをつなげ実現していく可能性を秘めていると感じました。個人として復興支援に熱意を持って活動している学生は多いと思いますが、それがグループやプロジェクトとして、なかなかまとまりにくいと感じています。一人ひとりの力は限られているので、その力をまとめることで1+1が3にも4にもなるよう取り組んでいければと思います。そのためにも互いのメリットを活かし、さらに活動の幅を広げていければと思います。

上田私自身もSustainable Week実行委員会の活動のきっかけが震災だったこともあり、以前から復興支援には関心がありました。SDGsの17の目標の根幹になる環境問題などは、震災・復興と重なっている部分が多いと感じています。そのことを再確認するいい機会になりました。自治体の方とお話しする際も震災と絡め、SDGsに興味を持つ方が増えています。今後、力を合わせていく場面も出てくると思います。

西野自分が正課で学ぶ防災と環境というテーマとSDGsの活動とのつながりが見えていなかった部分もありましたが、今回の話し合いでそれがつながってきた印象を受けました。今後の活動はもちろん、将来を考える上でもいい機会となりました。SDGsを通じ、いろいろとつながっていければと思います。

それぞれの活動にもいい影響

久保田副室長SDGsの活動はもちろん、皆さんのご経歴なども含め震災に深い関係があり、今後を考えていく上で有意義な内容になったと感じました。想像していた以上にふたつのグループが重なり合うことが多く、協力していけるのではと思います。
Sustainable Week実行委員会には様々なグループが参加していると思います。今回を機に、ふくしま塾など復興支援関連のグループが加わることでSDGsの活動にもいい影響を及ぼすウィンウィンの関係が築けるのではと思います。相互にジョイントすることでこれまで以上に広がりが持てるのではないでしょうか。今回は3人でしたが、より多くのメンバーでブレストすることにより、さらにアイディアなども出てくるのではと思います。それぞれの今後に期待していますし、災害復興支援室としても協力していければと思います。今日は本当にありがとうございました。

0から1を生み出す活動。それがそこに暮らす人々の未来へとつながっていく。