2019年3月 博士課程前期課程修了
独立行政法人中小企業基盤整備機構 勤務
河野 広夢さん
修了生
大学院で身につける専門性、論理的思考力、批判的な視点、
考えを自分の言葉で表現する能力は、社会人としての大きな武器
中小企業の後継者として
学問的に中小企業を学びたい
立命館アジア太平洋大学国際経営学部からの進学です。父が中小企業を経営しており、いずれは事業を承継する立場にあることから、学問として中小企業について学びたいと思ったのが進学の動機です。立命館大学経営学研究科には中小企業論を専門とする先生がおられるので、その先生のもとで学びたいと考えました。
研究テーマは「産業集積サプライチェーンと事業継承」です。後継者がいないために事業が継続できない事業承継問題は、今、中小企業にとって大きな問題となっています。中小企業が集まる産業集積地では、細かな分業体制が構築されているため、1企業の事業承継問題が体制全体に影響するのです。国が推進する大企業によるM&Aや第三者による承継は、これまでの体制を破壊するのではないかという問題意識から研究を始めました。
現場を見て、経営者の話を聴くのは
有意義な経験だった
東大阪地域の零細企業約20社にインタビュー調査を行いました。見えてきたのは、М&Aや第三者による継承は、中小・零細企業の経営者が求めるものとは違うということです。中小・零細企業は、大企業に比べて経営者の思いや理念が色濃く表れます。買収され、これまでに作り上げてきた理念や思いを残せないのなら、残す意味がないと考える経営者も多くおられました。
最近起こった問題なので先行研究も少なく、協力していただける企業も少なかったので、心が折れそうな時もありましたが、実際に企業と交渉して協力をいただくまでの交渉力や行動力を身につけることができましたし、ものづくりの現場を実際に見て、経営者の思いを聴くことができたのは、研究の面でも、自分自身の人生を考える上でも有意義でした。就職先として中小企業を支援する機構を選んだのも、大学院での学びがきっかけです。
「事業継承塾」で
中小企業経営の実際を学べた
立命館と大阪府中小企業家同友会との連携協力協定の一環として開設された課外プログラム「事業継承塾」に参加しています。そのプログラムの一つとして開講されている「特殊講義Ⅰ(中小企業経営実践講座)」では、毎週、中小企業の経営者が来てくださって、自身の経営の紆余曲折や事業承継についてお話しくださいます。経営理念を持つことの大切さや従業員との関わり方、ファミリービジネスとして家族関係の大切さも学び、私自身も、もっと父と話さなければと思うようになりました。
私は大学でようやく本を読む楽しさに目覚め、自分の武器となるような専門性を身につけたいと考えるようになって、大学院に進学しました。大学院は、与えられた課題をこなす「勉強」ではなく、興味のあることを深く追求する「研究」を行う場です。その過程で身につける専門性、論理的思考力、批判的な視点、考えを自分の言葉で表現する能力は、社会人としての大きな武器になると思います。それが大学院で学ぶことの意味ではないでしょうか。