2017年3月
経営学研究科
博士課程後期課程修了
石 錚さん
修了生
中国企業における女性の役員への登用問題を研究して、博士(経営学)の学位を取得
1.現在の所属
株式会社スカイコーポレーション
2. 研究テーマ・研究内容
企業の女性登用の遅れに関して
ガバナンスシステムの問題点を解明
企業の女性登用に関する議論は,世界の潮流になっています。近年の研究では,企業経営陣においての女性登用と企業の競争力や収益の向上に影響を与えることが明確になったにも関わらず、中国や日本などのアジア諸国における進捗状況は遅く、女性の登用状況は根本的に改善されていません。多くの企業において,依然として男性が昇進しやすい昇進制度は存在しており、企業における女性の特徴や価値が正しく認識されなかったため、女性たちは男性に比べて排除されやすくなります。
この課題について、多くの研究では、主に女性の労働条件に関わる労働法令に集中して企業の組織構造や権力構造への焦点を無視しており、すなわち「システムに潜在する差別イデオロギー」や「企業のガバナンスシステム」の問題を意識していませんでした。私の論文では,これまで看過された管理制度(とくに人的資源管理制度)に焦点に当て企業におけるガバナンスシステムの機能を解明し、そのなかに存在する支配関係を明らかにしました。
3.学位取得まで苦労した点
既存のアイデアを新たに位置づけ
解釈しなおすことが大切
博士論文を作成する前に、まず、論文とは何かという概念をはっきり認識しなければなりません。論文は,既存のある研究よりも新しく、しかも妥当性,普遍性のある議論を論理的・実証的に展開したものです。その新しいもの、いわゆるオリジナリティ(独創性)が論文の最も重要なポイントとして求められます。しかし,オリジナルなものがあるなら、なんでも「論文」というわけではありません。ひとつの問題に対して「単なる個人の意見」をいろいろと書いた場合、「新たな視点や考え方」になるかもしれませんが、妥当性や普遍性が認められなければ、「論文」になりません。
研究分野におけるオリジナリティを出すために力を入れたところは、まず先行研究や関連資料を踏まえつつ、自分の言葉・主張と他の人の言葉・主張を認識し区別することです。私にとって,多くの先行研究の内容を要約することができますが、困難なのは先行研究を踏まえて、既存の問題やアイデアを、自分なりの新たな論文に位置づけ解釈しなおすことです。また,オリジナリティのほか、論文にある理論的考察も非常に重要であるため、私は論証の部分では、量的分析のみならず、質的分析も加えて慎重に行いました。
4.学位を得て学んだこと、喜んだこと
身につけた洞察力、分析力、論理力は
人生最大の財産
博士学位の意義について、私は研究の「終わり」ではなく、これから新たな学問を知るための「始まり」だと思います。とくに、世の中において問題の真相を発見し解決策を見出すために、博士課程で身につけた洞察力、分析力や論理力などが必要となります。私にとって、大学院においてこれらの能力の習得は人生最大の財産と喜びだと思います。博士課程のゼミ指導において、私の指導教授は博士論文の執筆のみならず、研究者および社会人としてどう考えるべきかという問題意識についても多くの教示をいただくことができました。