SPECIAL CONTENTS #3 岡本先生の素顔

オナーズ・プログラムを支えた方々にキャンパスでの岡本先生を語っていただきました。

片岡 實

片岡タクシー

岡本先生が立命館大学で授業をされるとき、いつもご指名いただき、タクシーで岡本先生を送迎して参りました。岡本先生は、タクシーの中ではとてもお茶目な方で、普段着のお話をたくさんされました。ところが、タクシーを一歩出ると、主要な方々がお出迎えやお見送りをされ、大きなオーラをまとわれた偉大な方でした。

立命館大学のゼミ生が岡本先生をお見送りされた後、タクシーの中でよく「忙しい中であっても、学生達のことが可愛いから、こうして続けて東京から京都に教えに来ることができる」とおっしゃったことがありました。ある時、タクシーの中で、国家公務員試験に不合格になったゼミ生の話をされ、「優秀なのにプレッシャーに弱い学生をどうしたらいいだろうか」と漏らされていたいたことがあり、私が僭越ながら「精神力を鍛えるには、もっとユーモア力を学生に鍛えていかれてはいかがですか」と進言をさせていただきましたら、「そうかもしれないですね」とおっしゃっておられました。私の目から見ても、岡本先生はとても学生思いの素敵な先生でした。

岡本先生はどなたにもえこひいきされない実直な方で、岡本先生が亡くなられたことが、今でも大変悔しく、悲しい気持ちでいっぱいです。今も岡本先生が私に声をかけてきてくださるような気がしてなりません。

片岡さんについて

片岡さんは、個人「片岡タクシー」の運転手です。岡本行夫先生は、立命館大学での授業の際、京都駅から立命館大学までの移動をいつも片岡さんにご指名されていました。岡本先生のゼミを支え、岡本先生も大きな信頼を寄せられた方のお一人です。

新野 豊

立命館大学国際関係学部事務室

岡本先生は、静かに、学生の話をよくお話を聞かれる方でした。緊張してなかなかスムーズに話せない学生の話も、穏やかに、耳をすますよう聞かれました。学生たちは、時として、私もひやひやするような、まっすぐな(そして場合によっては不躾な)問いかけや意見を先生にぶつけることもありましたが、先生は静かに、最後まで話を聞かれたうえで、ひとりひとりに丁寧にお答えになり、さらなる問いを投げかけて、学生が、自分の頭で、自分なりの軸を持って考えるように促されました。

先生は、常にプロアクティブであれ、とメッセージを投げかけられました。私は事務局の担当者ではありましたが、先生のお話をステージの陰から齧りつくように伺い、また、先生にくらいついていく学生に刺激を受けて、米国の大学院への留学に挑戦しました。今も、学生の声に向き合っているか、自分の頭でプロアクティブに考え、行動しているか、先生から常に問いかけられている気がします。

加藤 良直

立命館大学共通教育課

2015年度より本プログラムの事務局を担当して6年間、巣立った多くの修了生を見てきた。岡本先生のゼミや岡本先生の事務所でのインターンシップで刺激を受け、岡本先生にあこがれて外務省でのキャリアを目指して日々学業に励む修了生、強い課題認識を持って国際機関で働き続ける修了生、自らの能力をもう一段引き上げるためにイギリスの大学院に進学して頑張る修了生、岡本先生からいただいた奨学金でケニア研修に参加し、アフリカでのビジネスに自らの進路を開拓した修了生など、岡本先生にご指導いただいた修了生はこれまで400名余りに及ぶ。彼らは、中央省庁、地方自治体、NGO・NPOを含む国際開発・援助団体、国内外のグローバル企業、起業家など、多方面で活躍している。

彼らの成長の様子を見るたびに、岡本先生が常に学生達に仰っておられた「プロアクティブであれ」、「優しさと思いやりを持つ国際人であれ」、「百聞は一見に如かず」、「情熱を持とう」といった国際人として生きる上での心得を仕事や生活を通じて体現しようと奮闘されているように感じる。

本プログラムはOB・OG会も発足し、横のつながりや社会的ネットワークが構築されつつある。さらに、2020年度は本プログラムへの現役学生の応募者が過去最多となった。このようなプログラムの急成長の中での岡本先生の突然の訃報は、本当に残念でならない。岡本先生の教育におけるご功績を受け継ぎ、国際社会で活躍する学生を育てる取り組みをこれからも維持・発展させていきたいと思う。