Asia Week 2022での図書館での取り組み
阿波人形浄瑠璃と農村舞台:これは私たちの物語
「文化庁の京都移転」はいつ?
新聞やテレビなどさまざまなマスメディアで、文化庁(東京都千代田区霞が関)が京都(京都市上京区)に移転することが報じられており、本(2023)年3月23日から京都で業務を開始することを御存じの方も多いかと思います。
さて、みなさんはその文化庁が何をしている官公庁かご存じでしょうか?文化庁のホームぺージをみると「日本の文化芸術を世界に、そして次の世代へと伝えていく仕事をしている」官公庁であるということが分かります(URL: https://www.bunka.go.jp/bunkacho/index.html。最終閲覧日:2023年1月13日。詳しく知りたい方は、このURLにアクセスしてみてください。)。
今回、この記事で皆さんにご紹介するのは、この文化庁が所管している「文化財」の中でも、下図で示している「重要無形文化財」と関連した図書館での取り組みとなります。
図1.文化財の体系図
【典拠】文化財の体系図(URL:https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/gaiyo/taikeizu_l.html)
「重要無形民俗文化財」とは?
昨(2022)年11月30日、日本各地の民族芸能「風流(ふりゅう)踊」(41件)がユネスコの文化遺産登録されたことを御存じの方も多いのではないでしょうか。また、皆さんの出身地に伝わっている民族芸能が、登録されたといった方も中にはいらっしゃるのではないでしょうか。今回、紹介する「重要無形民俗文化財」は、既に2013年にユネスコの文化遺産登録がされており、これに先立つ1999(平成11)年12月21日に重要無形民俗文化財登録された徳島県の「阿波人形浄瑠璃」に関する図書館の取り組みに関するものとなります。 ちなみに「重要無形民俗文化財」の全国的な分布状況を、文化庁の国指定文化財等データベース(URL:https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/categorylist?register_id=302。最終閲覧日:2023年1月13日。)でみると、下表で示すように今回注目する徳島県では、4件の「重要無形民俗文化財」があり、さらに、その内訳は、「民俗芸能」が2件と「民俗技術」が2件となります。
表1.重要無形民俗文化財数
(1)都道府県ごとに見る分布
北海道 | 2 | 青森県 | 8 | 岩手県 | 9 | 宮城県 | 6 | 秋田県 | 17 | 山形県 | 6 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
福島県 | 9 | 茨城県 | 3 | 栃木県 | 5 | 群馬県 | 4 | 埼玉県 | 8 | 千葉県 | 6 |
東京都 | 6 | 神奈川県 | 6 | 新潟県 | 13 | 富山県 | 9 | 石川県 | 8 | 福井県 | 5 |
山梨県 | 4 | 長野県 | 10 | 岐阜県 | 12 | 静岡県 | 9 | 愛知県 | 12 | 三重県 | 10 |
滋賀県 | 6 | 京都府 | 10 | 大阪府 | 2 | 兵庫県 | 7 | 奈良県 | 7 | 和歌山県 | 7 |
鳥取県 | 4 | 島根県 | 7 | 岡山県 | 4 | 広島県 | 4 | 山口県 | 5 | 徳島県 | 4 |
香川県 | 3 | 愛媛県 | 1 | 高知県 | 2 | 福岡県 | 12 | 佐賀県 | 6 | 長崎県 | 8 |
熊本県 | 5 | 大分県 | 6 | 宮崎県 | 6 | 鹿児島県 | 11 | 沖縄県 | 9 |
(2)徳島県での分布の内訳
名称 | 種別 |
---|---|
阿波人形浄瑠璃<解説文はこちら> | 民俗芸能(渡来芸・舞台芸) |
阿波の太布製造技術 | 民俗芸能(生産・生業) |
阿波晩茶の製造技術 | |
西祖谷の神代踊* | 民俗芸能(風流) |
Aisa Weekとは?
Asia Weekは、2015年4月に開設された大阪いばらきキャンパス(以下、OICと略称を表記)で、毎年10月中旬~下旬にかけ、OICの教学コンセプトの1つである「アジアのゲートウェイ」を目指す教学展開やキャンパス創造を広く一般の皆様方に発信する催しとして開催しているものです。図書館では、これまで、様々な外部の専門機関と連携をし、以下で示すような企画を実施してきました。
【企画タイトル】
「安藤百福~アジア発展の奇跡を支えたインスタントラーメンを発明した大器晩成の人~」(協力機関:日清食品㈱)
【開催期間】
2018年11月15日(月)~12月20日(木)
【開催場所】
OICライブラリー・2F・展示室
【企画趣旨】
日清食品の創業者である安藤百福氏は、1934(昭和9)年に本大学専門学部経済学科をご卒業され、1996年(平成8年)10月7日には、本大学の名誉経営学博士号を授与された本学校友です。本展では、このような安藤百福氏の業績を、広く一般市民の方にも紹介する機会として企画しました。また、開催期間中、安藤百福氏をモデルとしたNHK朝の連続テレビ小説(「まんぷく」)が放映されていた時期とも重なったことから、本展を企画し開催しました。本展では、展示をご鑑賞いただき、アンケートの回答に御協力いただいた来場者の方に、試供品(日清食品㈱から無償提供)として「チキンラーメン」や「ぼんち揚げ(チキンラーメン味)」を提供することができました。結果的には、過去最高の見学者数1,340名(1日)を獲得することとなりました。
<展示会場内の風景>
<試供品提供ブースの風景>
<展示会場出入口の風景>
【企画タイトル】
「葬式の名人:茨木で過ごした文豪・川端康成の記憶」
(協力機関:茨木市、茨木市立川端康成文学館、丸善雄松堂株式会社)
【開催期間】
2019年10月13日(日)~11月13日(水)
【企画趣旨】
大阪府茨木市の市制70周年記念事業として、同市出身のノーベル文学賞作家・川端康成氏の短編小説をモチーフに制作された映画作品をヒントに実施した企画展となります。「現代から見た同氏の足跡(茨木市からご提供いただいたロケ地マップのレプリカを制作し、展示物としました)」と「同氏が旧制中学校を卒業するまでの足跡(茨木市立川端康成文学館から提供いただいた昭和1桁年代の白地図に着色し、さらには同館から同氏ゆかりの場所の写真画像を提供いただき、その場所について書かれた彼の作品を一つのパネルにまとめ、20枚のパネルを作成し展示した。また同館から作成されてまもない自筆原稿のレプリカを貸与いただきました。
見学者が行う抽選会で提供した景品として、丸善雄松堂からは川端康成氏の作品(文庫)を、茨木市からは映画制作の記念バッチを、川端康成文学記念館からは特製クリアーファイルなどを提供いただき、100名の見学者を獲得することができました。
<展示会場内(壁面)の風景>
<OICライブラリー出入口前の風景>
<展示会場内の風景>
阿波人形浄瑠璃と農村舞台:これは私たちの物語
この標題は、2022年のAsia Weekとして実施した図書館企画のタイトルです。この企画は、それ以前の企画とは異なり、本大学人事部の「R2030グラスルーツ実践支援制度(GPSP)(詳細は、https://ritsumei-grassroots.jp/)を参
照ください」の財政的支援を受け、実施予算を充分に確保できたことから、これまで以上にエンターテインメント(娯楽)性、すなわち来場者の方に愉しんでいただけるといった要素を重視しました。
具体的には、従来の展示が、その名の通り、本大学図書館所蔵資料や協力いただいた外部の専門機関の所蔵資料の
展示をメインとしていたのに対し、本企画では標題にもあるように「阿波人形浄瑠璃」の上演を行ないました。徳島
県立阿波十郎兵衛屋敷(館長:佐藤憲治氏)の御尽力で、太夫、三味線、人形遣い(鳴門座)、舞台監督など本公演に係わる出演者全員に徳島からお越しいただき、さらには農村舞台の舞台装置の一部である「襖(ふすま)からくり」
も小野さくら野舞台(名西郡神山町神領字本小野506天王神社境内)から本物を一般社団法人神山アーカイブレコ
ード(小松剛氏)の御協力により現物展示することができました。
実施時期がまだまだコロナウィルスが収束しない状況にあって、Asia Week自身が来場制限(事前登録制で2,000
人を上限として実施)の中で、主催者である立命館大学図書館の動員予測では60名を想定しておりましたが、結果的には、2倍を越える150名の皆さんに本公演をご鑑賞いただき、大会事務局が来場者に対して実施したアンケート調
査の結果でも57企画中第4位(「参加して良かったと思う企画」について、最大5つを選択するアンケート項目)の評価をいただくことができました。
2022年10月18日(火)~11月20日(日)
【実施体制】
<主催> 立命館大学図書館
<共催> 徳島県立阿波十郎兵衛屋敷、一般社団法人神山アーカイブレコード
【開催場所】
OICライブラリー・2F・展示室
*「阿波人形浄瑠璃」(演目は「傾城阿波の鳴門」)の上演は、B棟・1F・カンファレンスホール
【企画趣旨】
徳島県の人形浄瑠璃(阿波人形浄瑠璃)に関する現状や歴史をより多くの人に知っていただきたいといった主旨で開催しました。主題は「なぜ徳島で伝統芸能である人形浄瑠璃が現在も継承されているのか」というテーマで、農村舞台との関係性を通じて紹介しています。また、副題は、かつての徳島での人形浄瑠璃がそうであったように、我が国の地方にある多くの伝統芸能が消滅の危機にさらされているといった現状を考えていただく契機となればといった企画者の思いから命名しました。
本展では、徳島県立阿波十郎兵衛屋敷と一般社団法人神山アーカイブレコードのご協力により、多くの貴重な所蔵資料をご提供いただきました。
<展示会場内の風景>
<徳島の名産(鳴門金時、阿波晩茶、すだち)や「阿波人形浄瑠璃」の関連本を景品とした抽選会の風景>
<阿波人形浄瑠璃の上演風景(B棟1F・カンファレンスホール>