Feature #02

キャリアセンター部長と
学生ライブラリースタッフの対話
コロナ禍の
キャリアデザインに
必要なもの

小さな挑戦を重ねて視野を大きく広げよ

【就職活動にどう備える?】 挑戦を通して視野を広げよう
自分に必要な情報は自ら取りに行こう

片岡就職活動に向けて、1回生の時からどのようなことをしておけばよいのかを教えていただけますか。

紀國司法試験のような難関試験を目指す場合は、1回生から目標を定める必要があるとは思いますが、そうでない場合は、「就職活動のために何かをする」というのは、1回生では少し早いのではないでしょうか。

私は、1回生は視野を広げる時期だと思います。「自分が何をやりたいのか」を知ることも重要ですが、それと同時に「自分には何ができるのか」を考え、できることを増やすことに挑戦して欲しいと思います。今していることが何の役に立つのか現時点で分からなくても、やってきたことが将来的に役に立つということはいくらでも起こり得ます。何か行動を起こすこと、それ自体に視野を広げる学びがあり、成長にもつながると思うのです。

大学にはさまざまなチャンスが転がっています。与えられたものをこなす日常ではなく、ぜひ自分から挑戦をしてください。大きなことでなくてもいいんです。小さなこと、例えば、今までルーティンでやっていたことをちょっと崩してみることも挑戦だと思います。身近な例では、新しい分野の友達を作ってみるのも挑戦です。心地よい人間関係も必要ですが、考えが違う人、価値観の違う人からも刺激を受けることができると思います。

新しいことへの挑戦にはリスクがつきものです。「恥をかくんじゃないかな?」と躊躇することもあると思います。しかしお伝えしたいのは、恥をかけるのも、失敗が許されるのも学生の特権だということです。皆さんにとって今は本当に貴重な機会なんです。だからこそ小さなリスクをとって、一歩を踏み出してほしいなと思います。

片岡就職活動を始めて感じるのは「自分の好きな仕事」を見つけることの難しさです。どうしたら見つけられるのでしょう。

紀國すごく本質的な質問ですね。毎日「仕事が楽しい!やりがいがある!」と思っている人は、実は少数派だと思います。仕事とは対価をもらうことなので、成果を出すことが必要となってきます。そう考えると、自分の好きなことで成果を出す、対価をもらえるという状況は、現実には少ないのかもしれません。今の質問は、就職活動中に悩むことでもあり、就職してからの悩みでもあると思います。自分の仕事にどんな意味があるのかと考えたり、合わない、つらいと感じたりするのは、就職して1、2年目ではよく聞く話です。その時期にすごく悩んでいた卒業生が、次に会うと、できなかったことができるようになったと晴れやかな顔で話してくれるのもよくある話です。こうした例を見ると「できるようになると好きになる」あるいは「好きかどうかは別として面白くなる」ということがよくあるのではないかと思います。

ですから、仕事を選ぶ軸になるものとして、好きだからという場合もあれば、自分がその分野で成長できそうという場合、さらには社風や社員の人柄などの環境で選ぶ場合もあると思います。いくつもの軸の中で、自分が絶対に譲れないものは何かを見つけるとよいのではないでしょうか。好きかどうかにこだわってその仕事を排除してしまうのは、将来好きになる可能性をつぶして道を狭めてしまうことにつながるような気もしますね。

片岡就職活動に関する情報が多すぎて逆にどれを参考にするべきかが難しくなっていると思います。自分の欲しい情報をしっかりキャッチするためにはどうすればいいでしょうか?

紀國こうすればいい、こうしてはいけない、というノウハウみたいな情報は世の中にたくさんあるでしょう。就職活動に正解は無いので、細か過ぎることに囚われる必要はありません。それよりも、自分なりの軸になるものを見つけることの方が大切です。そうすれば、必要な情報とそうではないものが判断できるようになるのではないでしょうか。また、さきほどは、OBOG訪問の話をしましたが、訪問して得られることは他の人が持っていない自分オリジナルの情報になります。そんな自分なりの情報を得ることが就職活動ではすごく有利に働くような気がします。降りてくる情報は全員に公平ですが、自分で取りに行った情報は自分だけのものとなります。そちらの方を増やすようにするといいと思いますよ。

私の立場としては、「キャリアセンターからの情報を受け取ってくださいね」と言いたいのはもちろんなのですが、「欲しい情報は自分で探す」「友達と情報交換する」「自分から大学や先生、OBOGに聞いてみる」というのが大切だと思います。授業でも、「ここがどうしても理解できない」とか、「私は違う意見です」とか、そのようなことを言ってくる学生は大歓迎です。質問があれば、授業では触れられなかった内容も紹介することできます。これと同様に、就職活動でも、聞きたいこと、知りたいことがはっきりしている学生は、自分にとって必要な情報を得て、パっとチャンスをつかんでいる印象があります。

【学生へのメッセージ】 今までとは違う景色を見るために
小さなリスクをとって挑戦を

今中最後に、学生へのメッセージをお願いします。

紀國折角の機会ですので、本の紹介を通してみなさんにメッセージを送りたいと思います。

まず1冊は、加藤諦三著「大学で何を学ぶか」です。悩める若者の背中を押してくれる言葉がいくつも書かれている本で、私も若い時に踏み出す勇気をもらいました。

本の冒頭の節のタイトルは「感動はどこにあるのか」です。いくら努力してもできなかったことが、ある瞬間できるようになった、その時の感動は経験してみなければ分からない、感動は経験した人だけのものということです。「気にしているのは自分だけなのではないか」ということも書かれています。人には評価されたいという欲求があります。それがモチベーションになる側面はあります。しかし、それを気にし過ぎると自分が本当にやりたいことが分からなくなるかもしれません。自分のやりたいことが人から評価されるためのことにすり替わっていないかを問う必要があります。

「人は決断の前で、いままで握っていたものをいっさい離さなければならない」という言葉も印象に残っています。これは踏み出す勇気のことを言っています。踏み出すことは誰でも恐いと思います。赤ちゃんがハイハイから立ち上がる時、必ず転びます。それでもなぜ立とうとするかといえば、立ったら視界が変わるんです。小さなリスクをとって行動すると、見えるものが変わってきます。実は誰もが赤ちゃんの時から経験して知っていることなんです。「何のために努力するか?」と問われれば、私は「違う景色を見たいから」と答えます。今までやらなかったことに挑戦すると、少し景色が変わります。失敗ももちろんあります。でも、そうすると許容できる範囲も変わります。

もう1冊は、ティナ・シーリグ著「20歳のときに知っておきたかったこと」です。著者はTEDでのスピーチやNHK「スタンフォード白熱教室」でも有名な方ですね。さきほどお話しした「小さなリスクをとろう」は、この方の言葉です。特に印象に残っているのは「今日会った人に感謝の言葉を送ってみよう」というものです。著者は大学の奨学金の審査を行っています。しかし、採択できるのはほんの一部で、ほとんどの学生は不採択になります。不採択の学生から連絡があることは稀ですが、中には苦情を言ってくる学生もいるようです。そんな中である時「応募したことですごく勉強になりました。機会を与えていただいたことに感謝します」というメールがあったそうです。その時、彼女はその学生に連絡をしたくなり、別の研究プロジェクトに招待したそうです。感謝することによって新たな道が開けたのです。

感謝のメールを書くということは小さな挑戦です。でもそれは、もしかしたら人生を変える出来事や人との出会いにつながるかもしれない。皆さんはそのことをどう考えるでしょうか?

自分を変えられるのは自分しかいません。私は「小さなリスクをとって小さな挑戦をしてほしい」というメッセージを皆さんへ送りたいと思います。

紹介いただいた図書

1.「大学で何を学ぶか」

著者:加藤諦三
出版社:光文社
出版年度:1985年

2.「20歳のときに知っておきたかったこと」

著者:ティナ・シーリグ著 ; 高遠裕子訳
出版社:阪急コミュニケーションズ
出版年度:2010年

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