生殖をめぐる物語は
グローバルに広がっている

#006
総合心理学部 准教授安田 裕子

 人生の選択肢が増えた現代でも、「結婚して子どもを産むことがオンナの幸せ」という考え方はなくなりません。だからこそ、子どもに恵まれないことに悩む女性の多くは、思い描いてきた「幸せな人生」が歩めないという絶望を味わいます。

 「生涯発達」の観点からそうした女性たちが人生を再構築する過程を研究しています。まず、対象者に人生の分岐点でどのように行動し、どう感じたのか、不妊をめぐる経験を語ってもらいます。「語る」ことで悲しい過去の経験にも意味を見つけ、未来を歩むことができるようになるのです。それぞれが語る人生の物語は、聞く人に「人生は何度でも歩み直すことができる」と伝えます。

 最近では、医療の進歩により妊娠・出産をめぐる女性の選択肢はさらに複雑になっています。韓国では卵子提供が問題となり、インドやタイでは代理出産がお金稼ぎのビジネスとされていました。多くの場合、買い手は先進国の富裕層であり、この問題には経済力の格差や貧困といった社会問題が含まれていることが分かります。これは、日本人にも無縁のことではありません。個々人の人生の物語を大切にしつつ、グローバルな視点で生殖に関わる知識を増やしていく必要があります。

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