テクノロジー(科学技術)の発達はいまや「病気」や「生きる」ことの意味さえも変えようとしています。例えば、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という病気で寝たきりの状態の人が、問いかけに対して頭の中でYes・Noで答えた結果を捉えることができるようになったと報告されています。植物状態で意識が無いと思われている人の中に実ははっきりと意識があり、認知活動を行っている人が少なからずいるという事実が分かりました。
人間の細胞は予め決まった臓器や組織に分かれているので、例えば胃がんで胃を切れば、胃は無くなったままです。しかし、脳は傷ついても、他の神経細胞がその代わりに機能を果たすようになります。この能力を高め、脳卒中などで体に麻痺が残った患者の機能回復に役立てようと研究を行なっています。
しかし、この画期的な技術をスポーツ選手に用いて、記録を伸ばす「ドーピング」を行なったのではないかと指摘された人がいました。このように、テクノロジーの発達は医療倫理(決まりごと)や生命倫理という側面で新たな問題を投げかけてきます。