今日私たちは、さまざまな化学製品に囲まれて生活しています。2010年には「クロスカップリング反応」といい構造の異なる二つの物質を結合させて一つの分子にする化学反応を開発した日本人研究者がノーベル化学賞を受賞しました。
ただし、高価なレアメタルが使われていることや、化学反応後に不必要な金属塩が作られるため、経済的にも環境面からも理想ではないという課題がありました。そこで、研究に研究を重ね、環境にも優しく、日本の化学工業の発展に極めて有力な超原子価ヨウ素という別の物質を使うことで、これを克服することができました。
現在では、薬の分野への展開にも取組んでいます。例えば、「フッ素原子」を含む薬は、代謝安定性が高く、体内で緩やかに分解されるほか、脂肪に解けやすいなどのメリットから薬の約25%を占めており、将来のことを考えるとフッ素原子の導入はとても重要になってきます。これにクロスカップリング反応を応用することで、新しいくすりが生まれる可能性があります。
こうした新たな合成技術により、将来社会に革新をもたらす有機化合物が創りだされるかもしれません。