京都大学iPS細胞研究所所長・山中伸弥教授の研究グループが、どんな種類の細胞にもなれるiPS細胞の樹立に成功して以来、医療が大きく進歩しました。その一方で未だ課題も多く、再生医療には高い壁が立ちはだかっています。
そこで、実用可能なレベルまで細胞の性能を高める手法として『ダイレクトリプログラミング』に取り組んでいます。これはiPS細胞を経由せずに、ダイレクトに細胞の性質を転換(リプログラミング)するというものです。
現在、リプログラミング技術は心臓病の治療に大きな可能性を見出しています。そこで「ペースメーカー細胞」に着目し、不整脈が発生するメカニズムの解析に取り組んでいます。その結果、ある一種の不整脈の原因を突き止め、ペースメーカー細胞へのダイレクトリプログラミングの可能を見出しました。
これからの課題はこのようなダイレクトリプログラミングを実現する候補を見つけることです。将来の医療では、実験室で細胞を作り出すのではなく、直接体内で再生できるようにになるかもしれません。心臓だけでなくあらゆる臓器・組織の細胞を作るダイレクトリプログラミングが「命の再生」を可能にしていきます。