PHILOSOPHY設立趣旨

21世紀の課題の解決に向けて“知の統合”を果たし、
活動を拡大していきます。

【プロフィール】
川村貞夫
立命館グローバル・イノベーション研究機構
機構長代理 特別招聘研究教授

MOVIE

立命館グローバルイノベーション研究機構(R-GIRO)の設立理念

20世紀は「科学と技術の世紀」と言われます。科学を基礎とする高度な技術により、前世紀に我々が求めた物質欲および長寿欲の目標は、部分的には満足するレベルに到達できたと言えるでしょう。
100年前の夢物語、たとえば常に快適な温度や湿度の空間での生活、地球上の離れた場所への短時間での移動、離れた人との顔を合わせる会話、などは前世紀から今日までに達成されつつあります。
しかし、このような科学と技術の恩恵を享受できた人々は、先進国に住む一部に限定されます。このような恩恵の影には、地球温暖化、資源枯渇、食糧不足などの問題が隠されています。また、貧富の二極化、宗教対立の激化、市場原理の資本主義社会の限界など、20世紀は極めて重大な数多くの負の遺産を今世紀に残しました。

我々はこのような負の遺産を解消して、持続可能で人類が幸福に暮らせる世界を実現しなければなりません。21世紀の始めから、このような問題意識は多くの人々に共有されてきましたが、まだ問題解決には至っていません。
問題解決のためには、従来方法の延長ではない革新的な科学と技術の取り組みや、細分化された科学と技術の分野横断的活動からの知の統合が重要と思われます。いずれも、知の創造と知の継承の役割を果たすべき大学が、特に多くの分野を有する総合大学が、その責務を果たすべき状況にあります。

立命館大学では、このような大学としての使命を全うすべく、2008年に立命館グローバル・イノベーション研究機構(R-GIRO)を設立しました。
本機構は学長直轄の組織であり、課題解決のために、人文科学、社会科学、自然科学の分野を横断した10程度の研究プロジェクトを構成されます。第1期では、21世紀に緊急に解決せねばならない課題として「環境」「エネルギー」「食料」「材料・資源」「医療・健康」「安全・安心」などの10領域を研究対象としてプロジェクトを進めてきました。
本機構では21世紀の喫緊の課題解決のために、大学の独自予算によって各プロジェクトを実施しています。これらの活動が十分な成果となれば、世界的な研究拠点が形成されると期待されます。
また、本機構にはもう一つの役割があります。それは、各プロジェクトの研究活動を通じて若手研究者を育成することです。大学独自予算の多くは、この若手育成に充当されます。

我々が対象とする課題は、極めて複雑で、解決が難しいと予想されます。しかし、大学内での学部の壁を超えた異分野結集チームによって、目標達成に近づきたいと考えます。課題解決のためには、学外研究者との共同研究や企業との共同研究も極めて重要であり、積極的に進めております。
ぜひ皆様とともに、21世紀の課題解決に向けた活動を拡大していきたいと思います。

第4期の状況と、特徴について。

2021年から第4期のR-GIROが始まりました。「地球の自然環境の復元」「自然災害の克服」「生産年齢人口減の克服」「高齢者の健康増進と生き甲斐の追求」という4つの研究領域において、11の研究プロジェクトがスタートしています。
通常、大学では学部間の情報交流、研究推進は稀ですが、21世紀の課題を解決するためには、学部の壁を越えた取り組みが非常に重要になります。そこで、第1期から第3期までの経験に基づき、これまで以上により異分野との連携を効率的に実現できるようなシステムを導入しています。
第4期では、一般的に非常に距離があると思われている学問領域の間での異分野連携が進展しています。これによって新しいフェーズが開けていくことを期待しています。

若手研究者の登用の状況について。

R-GIROでは、プロジェクトごとに若手の研究者を雇用できることが、大きな特徴となっています。公募は世界へ向けて行っているため、立命館大学の卒業・修了者はもちろん、国内外からの応募があり、さまざまな国の多様な若手研究者が参画しています。
彼らはこのプロジェクトの中で、自分の力量を磨き、新しい発見をします。その能力・実績が評価されて、外部のいろいろな組織、プロジェクト終了後には、国内外の大学やさまざまな研究機関・企業へと新しい歩みを進めている状況が非常に多く見られます。
こうした若手研究者育成が、R-GIROの大きな目的の一つであり、現在、着実に成果が現れてきていると言えます。

産業界・官公庁などとの連携について。

R-GIROの目的は地球規模の問題を解決することです。つまり、問題は、必ず社会にあり、大学の中に閉じこもって論文を書くだけでは解決はしません。外部の企業や社会、さまざまな機関との協力のもとに、社会実装をしていく必要があります。そのために、企業と協力することもあれば、ある場合には起業することも、そして、国をはじめとする地方公共団体などの機関と協力をする場合もあると思います。
とにかく我々の考えたアイデアを提供し、実際に社会の問題の解決へ向かって進むことが重要です。この点なくして、R-GIROは成功したとは言えません。
現在、企業との連携において、いくつかの例で成果が出始めています。もちろん、課題は大きく複雑で難しいものが多く、そう簡単に解決に至るものではないでしょう。我々が、R-GIROで行うことは小さな一歩かもしれませんが、この活動によって少しずつでも前に進むことに意義があります。これからも、ぜひ、学外からのご賛同、ご協力を得ながら、進んでいきたいと考えています。