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【開催報告】R-GIROカーボンニュートラル実現へ向けた高効率エネルギー利用技術創成拠点「エネルギーの未来を考える」RU-APU連携研究会を開催しました。
2025年9月26日(金)立命館大学びわこ・くさつキャンパスにて、R-GIROカーボンニュートラル実現へ向けた高効率エネルギー利用技術創成拠点(プロジェクトリーダー:生命科学部 折笠 有基教授)主催のRU-APU連携研究会を開催しました。
初めに、立命館アジア太平洋大学(APU)サステイナビリティ観光学部 松尾 雄司 教授より「カーボンニュートラルをどのように達成するか? ―エネルギーシステムの観点から―」というテーマで講演が行われました。
松尾教授は、一般財団法人 日本エネルギー経済研究所を経て、現在はAPUにてエネルギー・環境問題に関する数理モデル解析や定量分析、政策評価等を研究しています。
松尾教授は、気候変動を緩和するための費用・気候変動により出てくる影響に適応するための費用・気候変動による被害額の3つのコストを考慮した費用便益分析による「最適」なCO2排出パスの考え方を紹介し、その不確実性のために望ましい将来の排出パスを「科学的」に決めることが難しいことを示しました。
日本の「2050年までに温室効果ガス排出量を正味ゼロにする」という目標を達成するには、エネルギー起源のCO2排出を行う各部門の取組が重要であることから、各部門の現在の取組事例と目標達成に必要な取組の紹介がありました。しかし、必要な取組内容が明確であっても、技術課題だけでなく、設備導入に向けた合意形成や導入・維持管理等のコストの問題など、実現するための課題があると紹介がありました。
部門内訳:エネルギー転換部門(発電等)、運輸部門(自動車・鉄道・航空機・船舶)、民生部門(家庭・業務)、産業部門(工場)
日本のエネルギー起源CO2排出量の内訳
(出所)国立環境研究所インベントリオフィス
現状と課題、技術開発などを考慮した2050年にカーボンニュートラルを実現するためのシナリオ分析の紹介がありました。どのシナリオケースでもCO2削減のためのコストは大きく上昇し、目標達成は容易ではないことがわかりました。比較的削減コストが低くなることが予想されたのは、技術革新が行われた場合のケースで、カーボンニュートラルに向けては技術革新の必要性が示されました。
続いて、理工学部 荒木 努 教授より「半導体の動向紹介」と題して、半導体の開発・製造における日本の立ち位置が紹介されました。データセンターの電力消費が社会問題となる中、半導体は情報通信技術の革新に必須の要素であると同時に、電力消費の要でもあることが紹介され、半導体の技術革新の重要性が示されました。
続いて、生命科学部 折笠 有基 教授より「電池・水素の動向紹介」と題して、カーボンニュートラルに必須となる革新的電池開発、水素製造技術の開発動向の紹介がありました。リチウムイオン電池が発火などの課題を抱える中、次世代電池の開発が求められていますが、リチウム電池を超える性能を有する電池開発の技術的なブレイクスルーの難しさが示されました。
公開ディスカッションでは、参加した学生・教員から活発な質疑応答と意見交換が行われました。
最後に、松尾教授より「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない(※)。仮に2050年までにカーボンニュートラル達成が不可能であったとしても、いつかの時点でそれを達成することが必要である。環境問題は経済問題。世界全体が脱炭素化に向かう中で、国内の産業の競争力を確保する形で技術導入を促進し、経済の成長につなげることが重要となる。」とのコメントがありました。
※IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書(2021)