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2025.10.16

【開催報告】大阪・関西万博にて、 R-GIRO「心の距離メータ拠点」が音楽イベントを開催しました。

2025年10月9日(木)大阪・関西万博 2025にて、R-GIRO「心の距離メータ」を用いたサイバー/フィジカル空間における人間関係構築技術の開発(プロジェクトリーダー:理工学部 岡田志麻 教授)主催の音楽イベント「ソニック・アルケミィ ― 音の錬金術 ―」を開催しました。

本イベントのディレクターは作曲家の小川類 R-GIRO客員教授、ファシリテータは拠点リーダの岡田志麻 教授が務め、科学と音楽の融合をテーマに、4つのグループの研究成果を音楽とともに紹介するレクチャー・コンサートとなりました。

マエストロボットと奏者の対話

西原陽子グループリーダー(情報理工学部教授)より、ロボットと人間の心が通い合い、心地よい会話ができるロボットの研究について紹介がありました。今回の発表では、心と心をつなぐ「ことば」や、チャットボットの未来を表現する試みとして、リコーダー奏者・長井舞さんと、西原グループが開発を進めるAIチャットボット「マエストロボット」との対話を実演しました。

長井さんの演奏に対し、マエストロボットはユーモアや思いやりのこもったコメントを返し、長井さんがそのアドバイスを取り入れて演奏を変化させるなど、人間同士のような自然な会話のキャッチボールが披露されました。

ディア・ロゴス ― 心拍が奏でる琵琶の音

岡田志麻プロジェクトリーダー(理工学部教授)より、人と人とが共感した際には心臓の鼓動が同期する現象が見られることがあり、それを手がかりに人間関係の可視化を目指す研究が進められていることについて紹介がありました。

今回の発表では、人の生理データを音楽へと変換することで、新たな創作の可能性を探る試みが行われました。薩摩琵琶奏者・川嶋信子さんが演奏する代表的な古典曲《祇園精舎》と、川嶋さんの心拍センサーから得られる心拍数に基づいてリアルタイムで生成されるエレクトロニクス音との共演が披露され、人の心を可視化して音楽で表現する研究成果の発表となりました。本成果は、複数人でのこころの音の重なりが表現できる研究に応用されます。

鼓動とバッハの共演

山浦一保グループリーダー(スポーツ健康科学部教授)の研究である、人間関係構築技術を体感する試みとして、バッハの《音楽の捧げもの》が演奏されました。この曲は、モチーフ(フレーズ)がさまざまな形で絡み合う複雑な構成を持ち、演奏者同士が自然と互いの動きや音に反応しながら演奏します。

今回の演奏では、各演奏者がLEDライト付きの帽子、タスキ、ポーチを身に着けました。LEDライトはそれぞれの演奏者の心拍データを反映し、心拍の変化を色や点滅で表現しました。

演奏を通じて得られた心拍センサーのデータからは、特定のモチーフに呼応する瞬間に心拍が揃ったり、微妙にずれたりする様子が見られ、こうした変化が演奏者同士の心理的なやり取りを映し出しているように感じられました。本成果は、心理的な心のやり取りを可視化して説明する研究に応用されます。

広がる関係性とボレロ

向英里グループリーダー(生命科学部教授)とともに、人間関係の質の向上と健康との関係を研究している古谷太志 R-GIRO専門研究員より、孤独や人間関係が健康に与える影響についての研究説明がありました。

今回の発表では、より良い人間関係が健康に影響を与える様子や、信頼関係が築かれていく過程を、ラヴェルの《ボレロ》を通して表現しました。立命館大学の吹奏楽サークル「Fiz」による演奏が徐々に広がるにつれて、演奏者の心拍が同期していく様子が確認され、音楽を媒介して確かに人と人の心がつながることが実演され、それが幸福感や心や体の健康に寄与することにつながる成果発表でした。

今回のイベントでは、心と身体、そして人間関係に関する研究が、音楽を通じて表現されました。研究者とアーティストの協働により、抽象的な概念が視覚的・聴覚的に体感できる形で提示され、参加者に深い気づきと共感をもたらしました。科学と芸術の融合が、人間理解の新たな可能性を拓くことを実感する貴重な機会となりました。