建築都市デザイン学科 Architecture and Urban Design

人の「行動をつくる」建築を
学生とともに設計する

宗本 晋作

宗本 晋作理工学部 教授

2019年12月、東京ビックサイトで開催された環境に関わる製品・サービスの総合展示会「エコプロ2019」に立命館大学が出展し、大学で行っている数々の研究を紹介した。開催期間中、展示やワークショップなどと同じくらい話題を集めたのが、斬新なデザインの展示ブースだった。設計を手がけたのは、理工学部建築都市デザイン学科の宗本晋作と彼の研究室の学生たち。「コミュニケーションが自然に生まれ、共に学び合う空間」をコンセプトにした展示ブースそのものも、展示された研究成果の一つだったのだ。

ブースは、立命館大学が定期刊行している研究活動報『RADIANT』がピクセルと化し、冊子に記載された研究内容が実態として現れたようなデザイン。足を踏み入れると、3D化された冊子の世界に飛び込んだような感覚になる。設計にあたっては、宗本の指導の下、学生たちが設計図を描き、模型を作るなど実制作を担った。「『RADIANT』のコンテンツを見せるというアイデアに沿って学生たちがプランニングしました。彼らの着想を生かしつつ、全体を俯瞰して方向性を定め、形にしていきました」と宗本は語った。

錚々たる出展者の中でも一際目を惹く立命館大学ブースは宗本研究室の設計になるもの

建築を通じて社会とかかわることを
重視し
教育・研究を一体化した
実践に取り組む

自ら建築設計事務所を主宰する宗本は、数多くの建築の設計を請け負っており、国内外のコンペティションでの受賞も多い。そうした最前線で活躍する建築家として、立命館大学でも建築を通じて社会とかかわることに重点を置いて学生にも設計に携わらせ、教育と研究を一体化した実践的な取り組みを展開している。

その中には立命館大学の他の研究者と連携した研究もある。横浜市で開催された「エネマネハウス2015」への参加もその一つだ。大学と民間企業が連携し、「学生が考える、将来の家」をテーマに先進的な技術や新たな住まい方を提案するモデルハウスを建築・展示するイベントで、立命館大学の作品は優秀賞・特別賞を受賞し、展示される5棟の一つに選ばれた。

宗本ら立命館大学チームが提案した住宅のコンセプトは「ZEH+水-水と暮らしの重ね箱-」。太陽光発電や燃料電池、断熱工法、断熱建具、蒸散ルーバーといった省エネ技術を用いて「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー)」を実現するとともに、「+水」として水を再利用する技術も導入した住宅を建設した。宗本と研究室の学生たちは設計を担当。「上水を使用する風呂などを2階に、階下にトイレを配置し、『水の垂直カスケード(滝)利用』によって水を徹底的に再利用する設計にしました。また内部を入れ子構造にして、家族構成やライフスタイルに応じて形を変え、多様な暮らし方を可能にするプランを提案しました」と宗本。設計では、ZEHと水の循環を実現するため各部屋や設備の配置などの条件をクリアしながら、新しい「暮らし方」やデザイン性も訴求するところに難しさがあったと明かした。

エネマネハウス2015

「研究活動も、建築家として施主から依頼されて建築を設計する場合でも、目的・クライアントの要望を達成した上で、新しい視点を取り入れ、空間に新たな意味・価値を生み出したり、感動を与えるものを提案したいと考えています」と宗本。そのために関心を持っているのが、人間の感覚や行動、生理的な反応に応じた合理的な建築だ。モニタリングやセンシング技術などを用いて人間の知覚や感性、行動を捉え、設計に生かそうというわけだ。例えば注視点移動計測装置を使って人の視線をトラッキング。その解析結果に基づいて建物の壁面を緑化し、誘目性の向上と環境緑化の両方を実現する建築を設計した。緻密な論理に裏付けられながらも宗本が生み出す建築は、他にはない造形で随所に驚きが散りばめられている。「どんなにユニークな形でも図面を引き、模型を作ることができたら実現できる。そう信じ、学生にも自由な発想で設計するよう指導しています」と語る。

「いまや建築の仕事は国境を越え、グローバルに広がっています。私自身、海外の建築設計を受注することも少なくありません。学生たちが将来エンジニアとして活躍する上で、グローバルな視点は不可欠です」。そう考える宗本は、教育・研究でも海外の案件に積極的に取り組んでいる。2019年には学生とともにレバノンのある研究所増設のコンペティションに挑戦した。既存の建物は、世界的に有名な建築家による直線と円を基調にした幾何学的な構造が特徴的だ。宗本らはそうした建築家の思想を尊重したデザインで新しい建物が一本のループでつながるプランを考案。加えて、より機能性に富み、建物内でコミュニケーションが活発になるような工夫も盛り込んだ。結果は及ばずだが、学生にとっては実践を通じて建築設計のおもしろさを知る稀有な経験になったことは間違いない。宗本の教育・研究実践は次代の建築家・エンジニアを育てるという点でも大きな意味を持っている。

レバノンでのコンペティションのために制作された膨大な数の模型

Profile
宗本 晋作

宗本 晋作理工学部 教授

研究テーマ
人間の感性評価を取り入れた設計方法の研究、数理的手法を用いた設計方法の研究、生理学的なエビデンスに基づく設計方法の研究
研究分野
ソフトコンピューティング、感性情報学、都市計画・建築計画、建築史・意匠
建築都市デザイン学科について

建築都市デザイン学科では建築を設計するための専門知識と技能が学べます。単に建物を魅力的に設計するだけでなく、社会資本として残るにふさわしい建築・都市を創るために、建築と都市、ランドスケープといった分野を学ぶのが特色です。

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