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2022年のニュース

2022.06.28

生涯スポーツ論 特別講義 「多様な性 スポーツ界は:キャスター・セメンヤの問題を軸に」

速水 徹氏(一般社団法人子ども未来・スポーツ社会文化研究所主席研究員・立命館大学客員教授)

去る2022623日における生涯スポーツ論の授業にて、元朝日新聞論説委員で、現在、一般社団法人子ども未来・スポーツ社会文化研究所主席研究員であり、本学客員教授でもある速水徹氏から「多様な性 スポーツ界は」というタイトルで、特別講義をしていただきました。

速水氏は、法的整備をはじめ、LGBTQといった多様な性が認められる社会において、「男性」と「女性」とが明確に区別されているものは、「トイレ」「公衆浴場」、そして「トップレベルのスポーツ」くらいではないかと学生に問いを投げかけられました。公正な競技運営を施す上で、様々なルールや規定は確かに重要であるものの、染色体で「区別」することが可能であった性において、心身の様々な発達が「性分化疾患(Disorders of Sex DevelopmentDSD)」の規定を困難している状況について説明されました。とりわけ、2012年ロンドン五輪と2016年リオデジャネイロ五輪において、女子800m2大会連続の金メダリストに輝いた南アフリカ共和国のキャスター・セメンヤ選手のDSDを巡る問題とスポーツ仲裁裁判所(CAS)の裁定について紹介されました。

セメンヤ選手は、男性における主要な性ホルモンの1つであるテストステロンが、平均的な女性よりも、値が高いため、国際陸上競技連盟(現在、ワールドアスレティックス)は、テストステロンに関する新たな規定を定め、セメンヤ選手の出場資格を制限しようとしました。セメンヤ選手と南アフリカ共和国陸上競技連盟は、この規定の無効を求めて、CASに訴えましたが、CASは国際陸上競技連盟の新規定を容認し、セメンヤ選手らの訴えを退けました。つまり、セメンヤ選手が今後、国際陸上競技連盟が主催する大会に出場するには、テストステロン値を下げる薬を服用しなければならなくなったという経緯について説明されました。

速水氏は、女性アスリートに対する参加資格の厳格化やLGBTQといった多様な性の在り方、またそれらに対するスポーツ界の対応がスポーツそのものの発展にどのような影響をもたらすのかについて、学生に問いかけながら、講義を進められました。また速水氏は、「スポーツ健康科学」を学ぶ学生に対し、公平性の名のもとに、男女二元性を堅持し続けるスポーツ界において、新たな制度設計やマイノリティの権利の保護などにどのように向き合うべきなのか、「問い」を立てて、考え続けてほしいというメッセージを残されました。

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2022.06.24

スポーツ健康科学研究科博士課程後期課程2回生の易東さんが、同研究科教授 橋本健志先生、博士課程後期課程 吉川万紀さん、博士課程前期課程修了生 杉本岳史さん、スポーツ健康科学部卒業生 友尾圭吾さんらと共同で取り組まれた研究論文「Effects of Maca on Muscle Hypertrophy in C2C12 Skeletal Muscle Cells」が、「International Journal of Molecular Sciences」に原著論文として掲載されました

https://www.mdpi.com/1422-0067/23/12/6825/pdf

https://www.mdpi.com/journal/ijms/special_issues/muscle_function

 

大学HPのプレスリリースはこちら

NEWSCAST記事はこちら


本学 NEXTフェローシッププログラム生 である易さんらは、滋養強壮、活力増強、栄養補給などの補助栄養剤として用いられてきた薬用植物であるマカが骨格筋細胞の生育・成長を促進するかを検討しました。

 C2C12筋芽細胞を2日間分化させ、マカ添加無しのコントロール群と0.1mg/ml濃度のマカ添加群(0.1 maca群)、0.2mg/ml濃度のマカ添加群(0.2 maca群)に分けて実験を行いました。マカ添加2日後、骨格筋の生育・成長を組織化学的に解析しました。また、分子メカニズムとして、筋細胞のタンパク質発現を生化学的に解析しました。その結果、いずれの濃度のマカにおいても、マカの添加によって骨格筋の生育・成長が促進し、筋肥大が誘発されることが示されました。その分子メカニズムに、筋合成に関連するタンパク質発現の増加が関与している可能性が示唆されました。ただし、組織化学的解析によって認められた顕著な筋肥大を説明するためには、さらなる分子メカニズムの解析が必要であると考えられました。

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2022.06.24

ゲストスピーカー名古屋大学 片山敬章先生: 講義「呼吸機能のトレーニング」について

スポーツ生理学の授業で、名古屋大学 総合保健体育科学センター/名古屋大学大学院 医学系研究科の片山敬章先生に「呼吸機能のトレーニング」について講義をして頂いた。


 最近、「呼吸筋トレーニング」をよく目にするが、その効果は何か?なぜ効果があるのか?といった内容を非常に分かり易く説明して頂いた。

有酸素性運動能力の制限要員には、呼吸のガス交換、循環の酸素運搬、骨格筋の酸素利用がありますが、持久系アスリートでは呼吸機能が重要となり、非鍛錬者では、骨格筋の酸素利用が重要であり、持久系アスリートとは異なるといった特徴があります。

 また、呼吸筋の疲労は、骨格筋と同様に疲労しますが、自覚症状はなく、すぐに回復するといった特徴があります。しかし、呼吸筋が疲労している場合には運動パフォーマンスは低下し、呼吸筋の疲労は呼吸のしづらさが関与しているといった報告もあります。また、呼吸筋を疲労させると、代謝受容器反射により血圧が増大させることから、骨格筋の血流配分が低下してしまい、パフォーマンスを制限している可能性が考えられています。


呼吸筋トレーニングでは、呼吸に抵抗性がある筋力系トレーニングを実施することで鍛える方法や、呼吸数を速く実施することで呼吸筋の持久系トレーニングを鍛える方法があります。呼吸筋トレーニングは主観的な呼吸のやりづらさが軽減されており、さらに、運動時における血圧上昇の増大を減弱する効果もあることが報告されています。また、長距離ランナーに適している呼吸筋トレーニングは、持久系運動では1回換気量が大きく、呼吸が多い、そのため、呼吸筋の収縮速度は速くなることから、呼吸筋トレーニングは筋持久系能力を高くすることが重要であり、呼吸筋の筋持久力を鍛えることがより呼吸のしづらさを軽減してくれる可能性があるということも分かってきています。


このように、呼吸筋トレーニングは運動パフォーマンスの向上に貢献する可能性はあるがまだまだ研究が必要である分野であることも最後に説明して頂き、今、注目を集めている「呼吸筋トレーニング」の効果やその機序について説明して頂き、学生も非常に興味深く、質問の絶えない授業となりました。

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2022.06.23

演繹的・帰納的に考える体幹トレーニングの是非

2022/06/17 「運動処方論」の授業において、順天堂大学の谷本道哉先生に「演繹的・帰納的に考える体幹トレーニングの是非」についてご講演頂きました。

 今回お招きした谷本先生は、NHK「みんなで筋肉体操」など多数のメディアにおいてご活躍されています。体幹トレーニングにおいてよく用いられているフロントブリッジなどの体幹固定系トレーニングを題材に、筋生理学的なパラメーターを用いてそれらのトレーニングの是非についてわかりやすくご説明されていました。体幹トレーニングは一般に広く行われていますが、科学的根拠のあるものとそうではないものの見極めがスポーツ健康科学部の学生として大切であると述べられていました。これらの見極め方法や新しい体幹のトレーニングなど受講者の知識もより深まったと思います。最終的には、トレーニングや臨床の現場に還元するために、「演繹法と帰納法」すなわち「複数の情報を収集して事実を試し、結論を得る」という科学に必要な観点で物事を見る、というメッセージが込められていました。学生のレポートでは、「演繹法と帰納法について実例を交えて説明してください」という課題に対して、学生の実体験をもとにまとめられていました。ご講演ありがとうございました!
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2022.06.23

スポーツマーケティング論に静岡ブルーレヴズからゲストスピーカーをお招きいたしました

 スポーツマーケティング論の授業にジャパンラグビーリーグワン DIVISION1に所属する「静岡ブルーレヴズ」の運営会社である「静岡ブルーレヴズ株式会社」の管理部部長、竹中大也様をゲストスピーカーとしてお招きいたしました。ご登壇いただいた6月22日は、プロラグビーチームとして静岡ブルーレヴズ株式会社が創立されてちょうど1年を迎える日でした。
 竹中様からは、まず、ヤマハ発動機のラグビー部であった静岡ブルーレヴズが、 企業スポーツからプロクラブへ移行する経緯や具体的な変化をお話しいただきました。そして、2022年1月から旧ジャパンラグビートップリーグがジャパンラグビーリーグワンとしてスタートした初シーズンが開幕戦からコロナの影響でいくつもの試合が中止になる中、世界一のプロラグビークラブを目指すクラブとして、静岡でのファンの創造やとパートナー(スポンサー)企業の獲得のプロセスをお話しいただきました。
 スポーツマーケティング論で学んだ理論的背景がスポーツの実際の現場で応用されていることを実感した受講生たちからは、次々に質問が上がり、大変充実した学びの時間となりました。竹中様、ありがとうございました。
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2022.06.21

【公聴会&ミニレクチャー】スポーツ健康科学研究科博士学位授与申請論文(2022年度9月授与予定)に関わって

標記、スポーツ健康科学研究科博士課程後期課程における2022年度9月授与予定の博士学位授与申請論文について、

【公聴会】および【ミニレクチャー】を開催いたします。参加希望者の方は、添付の「公示」より詳細情報を確認ください。

      

<公示>

立命館大学大学院スポーツ健康科学研究科博士学位授与申請論文公聴会のお知らせ2022年度9月授与予定)

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2022.06.22

第5回スポーツ健康科学会『藍星賞』の受賞者が決定しました

スポーツ健康科学会として「スポーツ健康科学」分野において教育ならびに研究において
顕著な業績・功績をあげた若手を中心とした教職員・学生を顕彰する表彰制度である「藍星賞」
について2021年度は下記の4名の方が受賞されました。おめでとうございます。

  1. 研究部門 森嶋琢真さん
  2. 教育部門 木下裕介さん
  3. 国際部門 廣松千愛さん
  4.  社会連携部門 杉山敬さん

    詳細は学会HPをご覧ください
    https://sites.google.com/view/spoken-gakkai/藍星賞


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2022.06.21

本学部教授・伊坂忠夫先生らの共編著 『2050年のスポーツ -スポーツが変わる未来/変える未来-』(晃洋書房)が出版されます。

2050年にスポーツはどのようになっているのか、またスポーツを通じて地域、まちづくりはどのように発展しているのか?

について、多様な専門家の立場から、2050年という長い射程を見据えてまとめてもらっています。

本学部教授・山浦一保先生も、スポーツ組織、ひと、社会の観点から一つの章を担当されています。

 


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2022.06.17

スポーツ健康科学セミナーⅡ:総合電機メーカーの仕事 特別講義:パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社人事センター直轄人事課 村井崚氏

2022616日(木)、標記の授業にて、パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社人事センター人事二部直轄人事課の村井崚氏に来学いただき、「総合電機メーカーの仕事」について特別講義をしていただきました。

まず、自己紹介として大学時代の過ごし方やモチベーショングラフを紹介いただきました。自分のコアとなっていた野球でなかなか結果が出ず、大学生活に対してやる気をなくしていたとのことですが、段々と自分の将来やキャリアについて考えるようになり、就職活動で納得のいく結果を残したいと気持ちを切り替えていったそうです。

また、大学生活とキャリアの繋がりについてもお話しいただきました。ここでは、自分自身の経験から自分が大切にしている価値観を見つけ、キャリアに繋げる方法を教えてくださいました。村井氏の場合は、自分のためだけでなくチームメイトや家族のために野球に取り組んだ経験から、誰を喜ばせたいのかが明確である方が良いという自分の価値観を見つけ、相手の顔を思い浮かべることができる仕事が向いているのではないかと感じ、就職活動の際にメーカーに興味を持っていったということです。

続いて、20224月からホールディングス化したパナソニックグループにおけるオートモーティブシステムズの位置付けについてお話しくださいました。オートモーティブはグループの売上高の18%を占める大きな事業とのことです。また、現在ではあらゆる業界の企業が自動車産業に参入してきており、CASEConnected,  Autonomous, Shared & Services, Electric)と言われるように100年に一度の大変革期を迎えていることを教えていただきました。加えて、「Heartmotive」というオートモーティブシステムズのスローガンや、人の快適、人の安心・車の安全、地球環境への取り組みとして自動車のどの部分で貢献しているのかについて紹介いただきました。

最後に、就職先としてなぜパナソニックを選んだかについてお話しいただきました。事業そのものが社会課題の解決に繋がっているという世の中への貢献度合いや、挑戦できる環境、会社の理念や価値観等が自分に合っており、この会社であれば自分の大事にしたい価値観を実現できると思ったということです。

就職活動までの道のりやどのようなことを考えて就職活動に臨んだか等を詳しく教えていただき、これから就職活動を行う学生にとって非常に有意義な時間でした。貴重なお話をありがとうございました。

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2022.06.16

株式会社ミールケア 丸山寛典副社長ご講演

丸山様には、株式会社ミールケアの概要と事業内容のご紹介をいただきつつ、今後の就職活動で、学生たちが職業を選択していく上での心構えや、会社を経営していく上で重要なこと等を踏まえながら、大変有意義なご講義をいただいた。事業内容としては、幼稚園・保育園給食や医療福祉食事サービスといった給食事業を幅広く展開している。また、「みーる劇団」と呼ばれる食育活動を行っており、社内の栄養士や調理師など、現場で食事提供を行うスタッフが子供たちに劇を通して食の大切さを広めている。
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 今回、学生たちには株式会社ミールケアが開発した「やさいぱん」が配布された。
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やさいぱんは乳・卵アレルギーフリーのパンであり、アレルギー対応食品として、幼稚園・保育園給食で取り入れられている。このやさいぱんについて、学生から「なぜにんじん味やトマト味など、子供たちの嫌いな野菜を選択したのか」という質問に対し、丸山様の「あえて人気のない野菜を美味しく食べてもらえることで、食育をする上でも効果的であると考えた」というお答えが印象的だった。
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2022.06.15

スポーツ教育学特殊講義において野外実習を実施しました

3回生以降に開講されているスポーツ教育学特殊講義では、これまでのスポーツ健康科学部の学びのうち、特にスポーツ教育学に関する知識や技能を用いて、実際に野外実習の立案、実施、評価までを行うことを目的とした実習を実施しています。コロナ禍の影響で、野外実習は3年ぶりとなりました。

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当日(202264日)は、大学近郊の日帰りトレッキングコースとして有名な「湖南アルプス」を実習場所として、実施されました。当日は朝から絶好の天候に恵まれ、道中では、各班で取り組む課題(例:高度と植生の関係、登坂中の身体活動量の調査等)のデータ収集をしながら歩くなど、目的をしっかりと持って行動しました。

往路の終盤では疲れてくる受講生もいましたが、皆で励まし合いながら目的地である湖南の景勝地である「天狗岩」に登頂できました。岩の上からは眼下に雄大な琵琶湖から近江富士が一望できるだけなく、遠くには比叡山から伊吹山までが眺望でき、爽やかな薫風を受けつつ、皆で登ってきたコースを振り返りながら達成感を共有しました。

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頂上付近で少し休憩をとった後の復路では、下りの足への負荷は、事前の想像よりも高いことを実感するとともに、参加者同士が互いの安全を確保し無事に下山することができました。

こうした野外実習を通じて、日頃話することがない受講生同士がコミュニケーションを取ることができたり、引率の大学院生の補助学生や教員と交流を持つことができたりしたようで、体力の養成や環境への気づきのみならず、共に行動する者同士の連帯感によるメンタルヘルスへの影響についても、深く実感する実習となりました。

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2022.06.09

スポーツ健康科学部・立命館グローバルイノベーション研究機構 専門研究員(助教)の神崎真実さんが取り組まれた研究論文が、「日本サイエンスコミュニケーション協会誌」に実践報告として掲載されることが決定しました。

スポーツ健康科学部・立命館グローバルイノベーション研究機構 助教の神崎真実さんが、スポーツ健康科学部教授 山浦一保先生、立命館グローバルイノベーション研究機構 補助研究員 藤田泰煕さん、金沢大学 専任研究員 王天一さん、理工学研究科 博士後期課程 増田葉月さん、理工学部 教授 岡田志麻先生と共同で取り組まれた研究論文「『総合知』の共創:心の可視化技術に関するワークショップの成果と課題」が「日本サイエンスコミュニケーション協会誌」に研究報告として掲載されることが決定しました。

 

私たちのプロジェクトチームでは、顔画像をもとに頬部分の毛細血管の色情報を抽出し、自律神経状態を計測する非接触センサを開発しています。こうした技術開発にあたっては、心身相関に係る「自然科学の知」と、健康状態の可視化が私たちの社会や人間関係に及ぼす影響を検討する「人文社会科学の知」を融合して、両者の総合知を共創していくことが求められています。

 

本研究では、高校生と大学院生を対象としたワークショップを実施し、可視化技術に対する参加者の考えを探索的に明らかにし、そして結果をもとに参加者とどのようにして総合知を共創するのかを考察しました。ワークショップの前後でアンケートを実施・分析した結果、非接触センサに対する量的な評価はプレポストで差がみられませんでしたが、自由記述の内容には変化が見られました。自由記述には前向きな意見と後ろ向きの意見、拒否的な意見が見られ、拒否的な意見のうち一部は議論を通して生産的な意見へと変化することが示唆されました。参加者の意見をもとに、技術による<媒介ありきの問題点>と<媒介そのものの問題点>という観点を導入して、共創の方向性について考察を行いました。

 

神崎真実・山浦一保・藤田泰煕・王天一・増田葉月・岡田志麻(印刷中)『総合知』の共創:心の可視化技術に関するワークショップの成果と課題 日本サイエンスコミュニケーション協会誌12(1), 42-48.

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2022.06.07

スポーツ健康科学セミナーⅡ:総合スポーツメーカーの仕事 特別講義:アシックスジャパン株式会社スポーツマーケティング部 永家伸洋氏

2022年6月2日(木)、標記の授業にて、アシックスジャパン株式会社 スポーツパートナーチーム スポーツマーケティング部 マーケティング統括部の永家伸洋氏に来学いただき、「総合スポーツメーカーの仕事」について特別講義をしていただきました。

 まず、自己紹介とキャリアの考え方についてお話しいただきました。小学生の時に参加した野球教室で出会った方が後に大学で野球部に入った際の監督になったという経験をお持ちで、人と人との縁はいつまた繋がるかわからないと感じ、人との出会いは大切であると考えているということを教えていただきました。また、就職活動の際に重視したこととして、自分の強みや弱みを分析するだけでなく、希望する会社の強みや弱みも分析し、自分が会社の弱みを強みに変えていけるかを考えたとのことです。

 続いて、テクノロジーが進化する一方で、運動する機会が少なくなっているというスポーツ界を取り巻く環境についてお話しいただきました。例えば、日本では平均寿命が延びている一方で健康寿命は変わらず、医療費の拡大が社会問題となっており、生涯スポーツの重要性が増していることをお話しされました。

 このような状況の中でアシックスが目指す姿として「VISION2030」を紹介いただきました。「誰もが一生涯、運動・スポーツを通じて心も身体も満たされるライフスタイルを創造する」を掲げ、今後はシューズ等の商品にかたよらず、サービス事業も拡大していくということです。例えば、ランニング関係のエコシステムを形成しようとする取組みでは、Race Roster やRunkeeperといった会社を買収し、アシックスの顧客管理システム「oneASICS」を用いてデジタル展開しようとしているということでした。

 最後に、大学連携事業についてお話しいただきました。アシックスでは2016年に早稲田大学、2017年に立命館大学と2つの大学とパートナーシップを締結しました。学生スポーツはアメリカと比較して日本はかなり収益が少ないため、学生スポーツを収益化できれば、日本にはスポーツ産業発展のポテンシャルがあるということです。そのため、アシックスでは人財育成・交流、共同研究・開発、社会貢献活動を連携事業の柱として、大学が持つスポーツ文化・アイデンティティの醸成を図っているということでした。

 アシックスはスポーツ健康科学部では就職希望者が大変多い会社ですが、学生にとってアシックスについてより深く知る機会になったと思います。

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2022.06.06

本学部助手の下澤結花先生の調査が「The Journal of Strength and Conditioning Research」に原著論文として掲載されました

安静時のアスリートの呼吸機能と運動パフォーマンスには関係性があった!?
-呼吸パターンに着目したスポーツ外傷・障害の予防戦略構築に繋がることが期待-

【プレスリリースURLhttps://www.ritsumei.ac.jp/profile/pressrelease_detail/?id=667

【本学HPニュースのページ】https://www.ritsumei.ac.jp/news/detail/?id=2625

 

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2022.06.02 education

健康運動科学特殊講義 寺田新准教授(東京大学大学院総合文化研究科)


一般に食事からの糖質・脂質の摂取比率(エネルギー)は55~60%、25~30%と定められている。これに対して最近、アスリートの間で、ファットアダプテーションといって、糖質15%・脂質80%という食事を摂取することにより、スポーツ競技中の脂質消費を上げ、限りある糖質を節約し、競技中の疲労などを防ぐ食事法が提案されている。寺田先生は、その機序について、そのような食事により、食欲が低下するという生理学的影響に加えて、骨格筋のピルビン酸脱水素酵素を阻害するPDK4という物質が増えることにより糖質の消費が抑えられること、さらに脂肪酸のβ酸化を活性化するβHDAという酵素の発言量が増加することにより脂肪酸の酸化が増加するという生化学的影響があることを実験動物を用いた研究で明らかにしたことをお話しされた。また、このような極端なファットアダプテーションより、実現可能性の高いマイルドファットアダプテーション(脂質54%、糖質19%)食により、PDK4を抑制することなく、βHDAの発現を増加させることにより、糖質を主なエネルギー源とするダッシュのパフォーマンスを低下させることなく、持久力を高めることができるか可能性を示した。最近では、このような食事法は高齢期における脳疾患の予防等にも有効であることが示唆されているという。これらの研究は有名サッカー選手との対談からヒントを得たものであり、今後ともスポーツ選手との関係を密にすることにより、スポーツパフォーマンスの向上さらに、スポーツ競技力・健康増進の基礎研究を行っていきたいという言葉で講義を終わられた。

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2022.06.01 activity

本研究科博士課程の井上健一郎さんの研究が原著論文として掲載されました

スポーツ健康科学研究科博士課程後期課程2回生の井上健一郎さんが、同研究科教授 家光素行先生、助教 藤江隼平先生、博士課程後期課程修了生 堀居直希さん、学部3回生 山崎エンヒさん、立命館グローバル・イノベーション研究機構 内田昌孝先生と共同で取り組まれた研究が「Physiological Reports」に原著論文として掲載されました。

この研究では、肥満ラットの有酸素性トレーニングにより内分泌因子:Follistatin-like 1FSTL1)が遅筋線維豊富な骨格筋において分泌が増大すること、さらに血液を介して動脈血管における一酸化窒素産生(血管拡張物質)を促進し、動脈硬化度の低下に関与することを明らかにしました。

 

https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.14814/phy2.15300

 

Inoue K, Fujie S, Horii N, Yamazaki H, Uchida M, Iemitsu M. Aerobic exercise training-induced follistatin-like 1 secretion in the skeletal muscle is related to arterial stiffness via arterial NO production in obese rats. Physiol Rep. 2022; 10(10): e15300. doi:10.14814/phy2.15300


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2022.05.31 activity

本学部講師・和田由佳子先生が立命館大学の広報課のインタビューを受け、研究と活動が立命館大学のHPにて紹介されています

 和田講師が、ジャパンラグビーリーグワン DIVISION1に所属する「静岡ブルーレヴズ/SHIZUOKA BlueRevs」の社外取締役に就任したことを受け、立命館大学の広報課からインタビューを受けました。インタビューでは、研究者になるまでの歩みや現在の研究について語っています。

 

インタビュー記事 

スポーツの現場と研究をつなぎ、スポーツがもつ価値を高めたい  和田由佳子・スポーツ健康科学部講師の研究と新たな挑戦 

 

立命館大学広報課 Twitter

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2022.05.31 activity

本学部講師・和田由佳子先生が、スポーツ産業の成長促進事業「スポーツ経営人材育成・活用推進事業」実践的スポーツ経営人材育成のためのケース教材開発に参画しました。

 本事業は、スポーツ経営人材の育成の促進を目的とし、ビジネス・マネジメントの理論やフレームワークを基盤に、研究者とスポーツビジネスに従事する実務家の共同により、実践的かつ汎用性のある教材を開発するものです。本事業には、スポーツマネジメント領域の14人の研究者が参画し、教材として理論と実践を踏まえた10ケースが開発されました。

事業の概要 

スポーツ庁HP「スポーツ経営人材育成・活用推進事業」の紹介

実践的スポーツ経営人材育成カリキュラム開発支援事業 報告書【概要】 (mext.go.jp)

 和田講師はケース1として、和田講師は松岡教授(早稲田大学)とともに、「ジャパンラグビートップリーグの観客維持とファン層拡大に向けたマーケティング戦略」を開発しました。ケース1は、メガスポーツイベントの影響を受けて、国内のスポーツ観戦市場に追い風が吹いている中、もしあなたが国内リーグのマーケターであった場合、顧客維持とファン層拡大に向けてどのようなマーケティング戦略を展開しますか?について検討するものです。

 この教材は、(公財)日本ラグビーフットボール協会のマーケティング担当者の協力も得ながら、国内のラグビー史に関わる実話と、スタジアムで収集した実際のデータなどを用いて検討する教材です。

 

開発されたケース一覧

ケース教材:スポーツ庁 (mext.go.jp)


 

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2022.05.31 activity

本学部講師・和田由佳子先生らの研究がRoutledge Taylor & Francis Group.から出版されるMarketing Analysis in Sport Business: Global Perspectives, World Association for Sport Management (WASM) book seriesに掲載されます。

立命館大学スポーツ健康科学部の和田由佳子講師と早稲田大学の松岡宏高教授が取り組まれた研究「Brand Attributes Scale for Professional Sport Teams: Measuring Strength, Favorability, and Uniqueness of Team Attributes.」が「World Association for Sport Management Series」の第10巻に掲載されます。

 

Marketing Analysis in Sport Business: Global Perspectives, World Association for Sport Management (WASM) book series 第10

 

 World Association for Sport Management Seriesは、世界のスポーツマネジメント学会を統括する「World Association for Sport Management学会」がRoutledge Taylor & Francis Group.から出版する書籍で、世界中のスポーツマネジメント領域の研究者が各国の事例を基にした研究を紹介しています。「Marketing Analysis in Sport Business: Global Perspectives」とサブタイトルがつく第10巻において、和田講師と松岡教授は、日本のプロ野球チームが、2004年の球界再編後に「地域密着経営」に移行したことを紹介するとともに、プロスポーツチームの地域住民の視点に基づいたブランド力を測定する尺度を開発しています。



 

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2022.05.31 activity

本学部講師・和田由佳子先生らの研究が「スポーツマネジメント研究」に掲載され、早期公開されました

立命館大学スポーツ健康科学部の和田由佳子講師、早稲田大学の松岡宏高教授、大阪体育大学の藤本淳也教授と共同で取り組まれた研究「性別とファンのタイプによるスタジアム来場者のセグメンテーション:ジャパンラグビートップリーグに着目して」が「スポーツマネジメント研究」への掲載が決定し、現在(20226月現在)早期公開されています。

「性別とファンのタイプによるスタジアム来場者のセグメンテーション:ジャパンラグビートップリーグに着目して」

 

 和田講師と松岡教授、藤本教授は、2015年にイングランドで開催されたラグビーワールドカップ(以下「W杯」)における日本代表チームの活躍後、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会の受託研究(早稲田大学スポーツ科学研究センター)として、2015W杯後のシーズンから2019W杯後のシーズンまで、経年的にジャパンラグビートップリーグ他、国内で開催される試合の来場者に対する調査を実施してきました。本研究は、2015W杯後にはスタジアムに女性の来場者が増加したこと、2019W杯後にはにわかファンが急増したことを受け、スタジアム来場者を性別とファンになった時期でセグメンテーションを行い、その特徴を明らかにし、実践的なマーケティング戦略を提示することを目的にしたものです。

 本研究により、自分をコアなラグビーファンだと思っているスタジアム来場者は、男女によってファンになった時期が大きく異なり、男性は第一次ラグビーブームともいえる1980年代ごろよりラグビーのファンである一方で、女性は2015W杯によってラグビーのファンになった傾向が示されました。また、同じ女性ファンであってもコアな女性ファンは、ラグビー観戦が主たるレジャー活動に位置付けられている一方で、にわかファンの女性にとってのラグビー観戦は、多くのレジャー活動の一つとであることが示唆されました。本研究は、国内ではこれまで概念的に整理されてこなかった「にわかファン」について学術的な視点から説明がされています。

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